東電国有化が完了 原賠機構、1兆円出資
経産相「一層の意識改革を」
政府の原子力損害賠償支援機構は31日、東京電力への1兆円の出資を完了した。機構は議決権の50.11%をにぎって実質国有化した。東電は福島第1原発事故の賠償、廃炉、電力の安定供給を進める。枝野幸男経済産業相は同日の閣議後の記者会見で「東電が電力利用者と福島の被害者のことを考える企業に変わることが必要」と述べ、東電に意識改革を求めた。
機構は「議決権あり」と「議決権なし」の2つの種類株を引き受けた。議決権のない種類株は東電の改革が進まなければ議決権が発生する。機構は潜在的には議決権の最大75.84%をにぎり、株主総会で合併や定款変更などの重要事項も決められる。
東電の広瀬直己社長は「国民の皆さまに負担をお願いする。申し訳なく大変重く受け止めている。賠償、(原発の)廃止措置、安定供給の達成のため、国民の皆さまから『第二の創業』というべき最後の機会を与えてもらった。『新生東電』として生まれ変わるべく最大限の努力をしたい」とのコメントを発表した。
東電は家庭向け値上げの認可を受け、今回の出資で資本不足も解消した。出資を受け、日本政策投資銀行や三井住友銀行など銀行団も8月1日に第1弾として3700億円を追加融資する。今後の焦点は柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に移る。
ただ、福島第1原発の廃炉や被災地の除染には数兆~十数兆円の費用がかかるとされる。東電が自力で捻出できるとの見方は少ない。経産相は会見で「電力料金の値上げで恒常的な赤字はなくなる。ただ、今後の全体の状況を踏まえ、様々な選択肢がありうる」と述べ、政府による追加支援が必要になる可能性を否定しなかった。
経産相は実質国有化は一時的な措置と強調。「いずれは(出資を返して)純粋な民間企業に戻るのが適切」と指摘した。ただ、東電が公的資金の返済を始めるのは早くても2010年代後半。過去の大手銀行などと比べても大幅な時間がかかる。賠償や廃炉など膨大な債務を抱えるうえ、債務の総額がいまだに確定しないからだ。経産相は「債権カットでV字回復した日本航空などと全く違う。同じ時間軸では考えられない」と強調した。
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