韓国大統領が竹島上陸 玄葉外相、大使一時帰国を指示
【ソウル=内山清行】韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領は10日午後、日韓双方が領有権を主張する竹島(韓国名・独島)に到着した。日本政府筋が明らかにした。韓国大統領の竹島訪問は史上初めて。韓国による実効支配をアピールする狙いで、日本政府は武藤正敏駐韓大使の召還を含めて厳しい対応を取る方針。日韓関係は長期的に冷却するのは必至だ。
李大統領は10日午前、ソウルを出発し竹島に近い鬱陵島(ウルルンド)に到着。同島で島民行事などに出席した後、竹島に入った。竹島の視察を終えて、同日中にソウルへ戻る予定だ。文化体育観光相や環境相らが同行したもよう。
日本政府は李大統領の竹島訪問を受けて、「速やかにハイレベルで強い抗議をする」(外務省幹部)考え。武藤大使の召還も含めて対応策の検討に入った。
李大統領は15日の光復節(日本の植民地支配からの解放記念日)を控え、韓国国民に竹島を韓国の領土だと改めて訴える思惑がある。李大統領は旧日本軍の従軍慰安婦問題を巡り、日本側が「解決済み」と主張していることに不満を強めている。領土問題と絡めて対日強硬姿勢を示す狙いがあると見られる。
李政権は来年2月の任期切れを前に、不正資金事件による側近の逮捕などが相次ぎ、レームダック(死に体)化を食い止められずにいる。12月の大統領選挙を控えて国内に反対意見がほとんどない竹島訪問を強行し、野党側の攻勢をかわし求心力を少しでも回復したいという側面も大きい。
竹島は日韓が領有権を主張するが、韓国は島内に警備要員を常駐させるなど実効支配を強めている。最近は7月末に日本の防衛白書が竹島を「わが国固有の領土」と記述したことに韓国が強く抗議するなど、両国間の応酬が続いている。
韓国大統領にとってナショナリズムに訴える領土問題と「反日」は数少ない世論対策カードだ。与野党ともに賛意を示す政策で、実行に政治的な負担も少ない。政権末期に「反日」を国内利用するのは、韓国歴代政権が繰り返してきた手法でもある。
問題は日韓両政府が事態を収拾させる見通しをもたないことだ。領土問題は双方に譲歩の余地が乏しく、エスカレートしがちだ。慰安婦問題でも「日本政府の法的責任を認めよ」といった韓国側の要求に日本政府が妥協するのは難しい。日韓関係の冷却化は長期化する可能性が高い。
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玄葉光一郎外相は10日午後、外務省内で記者団に、韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領が日本と韓国の双方が領有権を主張する竹島(韓国名・独島)を訪問したことに抗議するため、武藤正敏駐韓国大使を同日中に一時帰国させると表明した。李大統領の訪問について「なぜこの時期に訪問したのか全く理解できない。政府として強く抗議する」と述べた。
武藤大使を召還するのかとの質問には「召還は任務の停止になる。一時帰国だ」と答えた。武藤大使の帰任時期については「ソウルにいつ帰すかは決めていない」と語った。
外相は「今後相応の措置を取らざるを得ない」とも指摘し、韓国に追加の対抗措置を検討する考えも明らかにした。11日午前に外務省で武藤大使から報告を受け、今後の対応を協議する。