「景気減速、新興国にも波及」 IMF専務理事が懸念
G7で討議へ
国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は11日午前、都内で記者会見し「景気減速が先進国から新興国にも波及している」と懸念を表明した。欧州の債務危機や米国の財政緊縮などの「不確実性の高まりが(減速の)主な要因」と強調。同日午後に開く7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議などの場で、問題解決へ迅速な行動を呼びかける考えを示した。
IMFは9日、世界経済の成長見通しを7月時点より引き下げた。ラガルド氏は「最大の変化は成長の減速が先進国から新興国に波及してきたこと」と指摘し、中国やロシア、ブラジルなどの地域を挙げた。
減速の要因としては「不確実性の度合いが高まっている」と分析した。欧州危機の長期化や、米国で来年初めから急激な財政緊縮が起きかねない「財政の崖」問題などの不安が解消しないため、投資家や企業がリスクを避けている可能性に言及した。
ラガルド氏は米連邦準備理事会(FRB)や日銀など中央銀行が大規模な金融緩和に踏み切ったことを「非常に良い動き」と評価した。その上で欧州債務問題については欧州中央銀行(ECB)が南欧国債の買い取り策などを発表したものの、「銀行同盟の実現など、さらに迅速な行動が必要だ」と促した。ギリシャが求めている財政再建計画の2年延長を容認する意向も重ねて示した。
日本と中国の関係について「高成長を遂げているアジアの国々の安定は世界経済にとっても決定的に重要だ」と強調。韓国も含め「領土をめぐり見解の違いがあっても迅速に解決され、経済の協力関係が続いていく」と予想し、日本との関係改善に期待感を示した。
日本経済に関して「東日本大震災後のエネルギー政策の転換に見事に対応したことに感銘を受けている」と語り、48年ぶりにIMF・世銀総会を主催した日本の運営をたたえた。中国人民銀行総裁らが来日を中止したことにも触れ「素晴らしい会合に参加する機会を逃している」と懸念を表すとともに「真の意味で世界経済のパートナーになってほしい」と注文をつけた。
G7会合は世界経済の減速感の強まりを踏まえ協調策を探る。12日に開くIMF総会の全体会合では金融部門の改革、国家債務の削減、雇用増を伴う景気回復、世界経済の不均衡が主要議題となる見通しだ。出資割り当ての見直しなどIMFの統治改革も話し合う。