防災計画なければ「原発再稼働は困難」 規制委員長
原子力規制委員会の田中俊一委員長は24日の記者会見で、原子力発電所の周辺自治体がつくる地域防災計画について「再稼働の条件ではないが、(つくってもらわないと)再稼働はなかなか困難になる」との見解を明らかにした。規制委は避難区域をこれまでの8~10キロ圏から30キロ圏に広げる方針だが、自治体の防災計画づくりが遅れれば原発の再稼働にも影響が出るおそれがある。
規制委は24日、東京電力福島第1原発のような事故が全国の16原発で起きた場合の放射性物質の拡散を予測した地図を公表した。東電柏崎刈羽、関西電力大飯など4原発で、国が避難の目安とする30キロ圏を超えて放射性物質が広がると分析した。
原発周辺の自治体の防災計画づくりにも影響が及ぶ可能性があるが、田中氏は「予測はあくまで計算。(避難区域は)30キロ圏で十分だ」と強調。今回の予測は山や谷などの地形を考慮していない点に触れ「シミュレーションが独り歩きしても困る。やたらと不安に思わないでほしい」と述べ、関係自治体に冷静な対応を呼びかけた。
規制委が避難の目安を30キロ圏に定めても、最終的に地域の避難区域を決めるのは自治体にゆだねられる。特に今回の予測で30キロ圏より放射性物質が拡散する懸念があると指摘された地域では、避難区域をさらに広げようとする動きが出る可能性がある。
避難場所の確保や避難民の誘導など、近隣自治体の間で調整が難航しかねない。田中氏は「協議の場を設けたい」と語り、規制委が自治体間の調整役を担う考えを表明した。
規制委は年内にも原子力災害対策指針をまとめる。自治体は指針をもとに、来年3月までに防災計画をつくる方針。一律30キロ圏になれば135自治体、のべ480万人が対象になる。
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