尖閣上陸、沖縄県警「捜査尽くした」繰り返す
香港の活動家らが沖縄県石垣市の尖閣諸島・魚釣島に上陸した事件で、沖縄県警は17日午前、入管難民法違反(不法上陸)容疑で逮捕した5人を検察に送致せず、入国管理局に引き渡した理由について「捜査を尽くした結果、他に犯罪の嫌疑はなかったため」と繰り返した。
海上保安庁によると、香港の抗議船は海保の巡視船にれんがなどを投げつけ、公務執行妨害などの疑いもあった。しかし、県警幹部は「捜査の詳細な内容は控えるが、他の犯罪の嫌疑はないというのが結論だ」と繰り返すにとどめた。
入管難民法65条は同法違反以外の犯罪の嫌疑がない場合、刑事訴訟法の特例として、送検せずに入管に引き渡すことができると規定。県警幹部は「他に犯罪の疑いがなければ刑事手続きを進めるより、強制送還の手続きを進めた方が望ましいというのが入管難民法65条の解釈だ」と強調。政治的配慮や圧力があったことを否定した。
警察庁によると、捜査の結果、所持品などから他の容疑は認められなかったという。身分を示す所持品もなく、入国歴や犯歴も照会したが、容疑者が自称する人物は確認できなかった。
送検せずに入管側に容疑者を引き渡したことについて、同庁は「関係機関とも協議し、仮に送検しても起訴に至るだけの嫌疑が十分にあるのかという点も含め、総合的に判断した。過去の同種事案も参考にした」などとしている。
2004年に中国人活動家7人が魚釣島に不法上陸した事件では、沖縄県警は今回の事案と同様、他に犯罪の嫌疑がないとして7人を送検せずに入管に引き渡し、強制退去にした。
一方、10年に尖閣諸島沖で中国漁船が海保の巡視船に衝突した事件では、海保が中国人船長を公務執行妨害容疑で逮捕。入管難民法違反容疑と違い、刑事訴訟法の特例がなかったため送検した。中国政府は釈放を強く要求し日中関係が緊迫。那覇地検が中国人船長を処分保留で釈放し帰国させる異例の措置を取ったため、政府や検察は世論の強い批判を浴びた。