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チェルノブイリ廃炉の教訓、日本人初の研修

渥美組の舟戸氏に聞く

編集委員 滝順一

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ゼネコンの東京渥美組(東京・豊島)の舟戸仁・代表取締役と4人の同社社員は今年6月、ウクライナのチェルノブイリ原子力発電所で廃炉作業の研修を受けた。「それまで放射線について何も知らなかった」と話す舟戸さんのチェルノブイリ体験から福島第1原子力発電所の廃炉についてもヒントが見える。

――チェルノブイリで研修を受けた日本人は初めてと聞きました。

「廃炉作業はチェルノブイリ原発公団が担当しており、公団で働く人は全員、毎年試験を受け合格しないと働けないそうだ。作業員には400時間を超える訓練(講義と実習)が義務付けられている。私たちは6月4~21日の日程で研修を受けたが、公団の人は外国人に講義するのは初めてだと話していた。放射線の基礎知識やチェルノブイリ原発の状況に関する講義から原発内での実地訓練もあった」

「実地訓練では鉛入りの服を2枚着てマスクを付け、高濃度の汚染物質を発見した場合の手順などを学んだ。(放射線を防護する)フェンスをたてて風上から汚染物に近づき道具を使って汚染物質をチタン製専用容器に収める。鉛の服を着ているが、安心はできないと言われた。ベータ線は鉛にあたってエックス線を出すからだ。私たちがやったのは模擬物質を使った訓練だが、教官からは『早くしろ、早くしろ』と迅速な行動を促された」

「回収した汚染物から放射線を出す核種を調べる。核種によって放射線の種類や半減期の長さが異なる。一度に25種類の核種がわかる測定器があり、それで調べる。さらに放射線量が高いか低いかで分別する。処分や管理が必要なゴミをできるだけ減らすためで、半減期が短いものは埋めて放射能が弱まるのを待つ」

――研修中はどこに滞在したのですか。

「原発から50キロほど離れた場所に森林を伐採してスラヴィティチという町が建設されている。人口約2万5000人でほとんどが原発で働いている人とその家族だ。そこに訓練センターがありセンター内に宿泊した。歩いて横断できるほど小さな町だが、休日に歩くとたくさんの子どもの姿を見かけた。若い家族が多いと思った」

「原発で働く人はスラヴィティチから専用の電車で約40分かけて通勤する。チェルノブイリ原発駅をおりるとID(身分証明書)をチェックされ、更衣室で靴を履き替え服を着替えて原発に入る。出入り口では放射線量の計測がある」

「驚いたのは原発敷地内でも線量が低いことだ。常時線量計を携帯し記録したが、敷地内で毎時0.08~0.12マイクロシーベルトくらい。徹底的に除染したようだ。ただ、芝生は除染していないから立ち入らないでと注意を受けた。また晴天時には散水車で水をまいてほこりがたたないようにし内部被曝(ひばく)を防ぐようにしていた。敷地内で線量が高いのは、事故が起きた4号機で、近づけば線量が上がる。4号機近くで記念撮影した時は毎時90マイクロシーベルトあった」

――原発ではどんな作業が行われていましたか。

「爆発した4号機を外側から封印した『石棺』の補強と、建屋を覆う新しいシールド(屋根)の建設、放射性廃棄物や核燃料を管理施設に収める作業などが行われていた。石棺はあちらこちらにひび割れができているので、そうしたところを補修し、壁全体を補強する大きな支持構造をつくっている。感心したのは、作業員の被曝を最小限にするための配慮だ。例えば溶接作業をする場合、実物と同じ部材を使って安全な場所で模擬訓練をくり返し、決められた時間内で作業が終えられるようにしてから、本番の作業にあたっている」

「放射線防護の考え方のALARA(as low as reasonably achievable、合理的に実行可能な限り低く)の原則を繰り返し聞かされた。働く人の被曝低減を最優先で考えているのがよくわかった」

「核燃料の取り出しも、3号機からの作業は終わっており、切断してコンクリートの保管建屋に入れている。保管場所は原発敷地から1キロほど離れた場所にあり専用鉄道で運ぶ。放射性廃棄物の保管もそうだが、一連の作業は遠隔操作で作業員の被曝を極力抑えている」

「事前に訓練をしてから本番作業に入るのでは時間がかかるのは確かだが、被曝をできる限り少なくして作業を進めることは、長い目で見れば廃炉の実現に不可欠なことだ。チェルノブイリで働いている人たちの表情は明るい。ALARAの原則を徹底すれば『(危険を顧みない)ヒーロー(英雄)は要らない』とも聞かされた。福島でもALARAの原則を広げていくのが大事ではないか」

 ■取材を終えて
 舟戸さんがチェルノブイリにまで足を運んだ動機は、福島第1原発の廃炉や除染の仕事を受注することにある。過去の震災で復旧作業などを受注してきたが、東日本大震災では福島県内ですぐに仕事を得ることが難しかった。原発関連の仕事を請け負った実績がなかったからだ。受注を狙うなら「社員にどれほどのリスクがあるのか、よく知りたいと考えた」と言う。ドイツのコンサルタント会社などを通じて交渉し、今年6月にチェルノブイリの地を踏んだ。
 福島では30~40年以上かかるとされる廃炉作業がこれから本格化する。事故直後はとにかく原子炉を安定した状態にし汚染を敷地外に広げないことが最優先だった。今後は働く人を被曝から守りつつ廃炉を進める一層の工夫が求められる。

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