部品共通化に思わぬリスク トヨタ、743万台リコール
トヨタ自動車は10日、パワーウインドーの不具合が発生する可能性があるとして、世界で14車種・約743万台をリコール(回収・無償修理)すると発表した。1回のリコール台数では同社として過去最多。グローバル競争のなか自動車各社は世界規模で部品の共通化を進めているが、ひとつの不具合が車種や国境を越えて広がるリスクも高まっている。
国内は小型車「ヴィッツ」「ラクティス」など6車種で約46万台(2006年9月~08年7月生産)のリコールを国土交通省に届けた。海外は「カローラ」「カムリ」など12車種、約697万台(05年7月~10年5月生産)が対象。
パワーウインドーのスイッチに潤滑油が均一に塗られていない車があり作動不良を起こす場合がある。事故報告はないという。今後は販売店での検査を通じて専用潤滑油の塗布やスイッチ交換の形で対応し、作業は40分程度で終わる見通しだ。
トヨタは09年以降、米国でフロアマットやアクセルペダルに問題があったとして、延べ1000万台規模のリコールと自主改修を実施。その際は1000億円弱の費用負担が発生したが、今回は「修理が容易なため当時の負担を大きく下回りそうだ」(関係者)との声が出ている。
業績への影響は限定的となりそうだが、世界規模になった部品の共通化によって潜在的なリスクは高まっている。
北米などでリコール対象になった「ヤリス」は「ヴィッツ」の海外仕様車で基本は同じ車。「カローラ」や「RAV4」などグローバルで台数を稼ぐ車種も汎用品が多く使われている。今回はわずか1社の供給部品の欠陥が原因とみられるが、その影響は特定の車や地域にとどまらなかった。
トヨタは現在、原価低減を狙って世界レベルでの車台の絞り込み、部品の共通化をさらに進めている。日産などライバルも取り組む方向は同じだ。超円高もあり欧米韓国勢と世界で競っていくには生産効率を高める共通化は不可避。コスト競争と並行した品質管理の徹底が今まで以上に求められている。