原発ゼロにほころび 経産相、大間建設継続を容認
枝野幸男経済産業相は15日、Jパワーの大間原子力発電所(青森県大間町)と、中国電力の島根原発3号機(松江市)の建設継続を容認する考えを表明した。ただ、大間原発などが稼働すれば、廃炉は2050年代にずれ込む。30年代に原発稼働ゼロをめざす政府方針と整合性がとれず、政策は早くもほころびが広がり始めた。
「(建設の)許可を取り消すとか、新たな手続きを加えるとかいうことは考えていない」。枝野経産相は青森県の三村申吾知事らに対し、東日本大震災後に工事を止めている着工済みの国内原発について、建設の再開を容認する考えを閣僚として初めて示した。
大間原発の建設を08年から進めているJパワーは同日、「安全強化対策を運転開始まで確実に実施し、より安全な発電所となるよう全力で取り組む」とのコメントを発表。島根原発3号機は工事の9割以上を終えており、中国電力は「運転開始に向けて安全確保に万全を期し、地元の了解を得たい」としている。
しかし、政府が決めたエネルギー・環境戦略は(1)原発は40年廃炉(2)新増設はしない――が基本原則。経産相は大間原発を稼働させるか否かの判断を原子力規制委員会の判断に委ねる意向だ。仮に10年代半ばに稼働すれば、40年後の廃炉は50年代半ば。政府の原発ゼロ方針と大きく矛盾する。
もしも30年代に稼働を止めれば、事業者が投じた莫大な建設資金を回収できなくなる懸念がある。この点について経産相は「(原発ゼロを)可能にできるよう最大限のことをやっていく。すべてはそこから先の話だ」と明確な方針を示さなかった。
30年代に原発稼働がゼロとなれば、原発から出る使用済み核燃料を再処理して燃料を取り出す必要性も早期に失われる。同日の会合では青森県むつ市の宮下順一郎市長が「(原発稼働が)ゼロになったときの再処理のあり方はどうなるのか」と政府側にただした。同市では、全国の原発で発生する使用済み核燃料を一時保管する中間貯蔵施設が建設中だ。
経産相は「(両立は)困難ということは認識している」などと苦しい回答に終始。また「(原発稼働を)ゼロにするために(地元自治体との)約束を破ることはない」とも述べ、核燃サイクルの維持を「原発ゼロ」の目標よりも優先する姿勢も示唆した。
青森県の自治体が使用済み核燃料の受け取りを拒否すれば、全国の原発敷地内が使用済み燃料ですぐに満杯になり原発の稼働が困難になる。事前調整を怠ったままの拙速な政策決定の矛盾が早くも露見している。
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