ハイネケン、「タイガー」ビール買収で合意
取得条件上げ
【シンガポール=佐藤大和】欧州ビール大手のハイネケン(オランダ)は17日、シンガポール大手アジア・パシフィック・ブルワリーズ(APB)の買収で最終合意したと発表した。買収額は54億シンガポールドル(3400億円)。APBは有力ブランド「タイガー」を持ち、アジア各国に展開しており、ハイネケンは需要の拡大が期待できる新興国市場の事業を強化する。
ハイネケンは同日、APB株の40%を保有する同国飲料・不動産コングロマリット(複合企業体)フレイザー・アンド・ニーブ(F&N)経営陣とのあいだで、1株当たり53シンガポールドルで全株取得することで合意。既保有分と合わせたハイネケンのAPBの出資比率は82%となる。株式公開買い付けを通じて残りの株式も取得し、完全子会社化を目指す。
ハイネケンとF&NはAPBの共同株主として歴史的に親密で、今月3日には1株50シンガポールドルの条件で合意していた。ところが7日、格安ビール「チャーン(象)」をテコに海外進出をねらうタイ・ビバレッジグループがF&Nに対し「1株55シンガポールドルで7%分の株式を取得したい」と横やりを入れていた。
F&Nは株式売却について株主総会の承認を得る必要があり、ハイネケンとF&N経営陣は条件の引き上げが避けられないと判断。両者は今回、「提示額は最終で新たな提案にF&Nは一切応じない」との条件を盛り込んだ。近く臨時株主総会を開催し、年内に株式譲渡を完了する予定。
ハイネケンは、アジアの新興国では世界最大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブなどに後れを取っており、条件を引き上げてでも、APBは逃せない案件だった。
今後は、タイ・ビバの対応が焦点になる。タイ・ビバはF&N株の買い増しを進めており、筆頭株主になっているためだ。
F&Nは主力3部門のうち「ビール」を売却することで残るは「清涼飲料」と「不動産」。F&Nが収益率の高い不動産事業に集中する場合、飲料部門が新たな争奪戦の対象になる可能性があり、これにはF&Nの第2位株主のキリンホールディングスも関心を示しそうだ。
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