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事故調報告を原子力改革の第一歩に

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東京電力・福島第1原子力発電所の事故原因の究明にあたる国会の事故調査委員会(黒川清委員長)が報告書をまとめ、衆参両院議長に提出した。

報告書は事故の「根源的な原因」について安全対策を先延ばししてきた東電と規制当局による「人災」と断定した。また規制当局に対する国会の監視など7項目の改革を提言した。国会は内容をよく吟味し必要なものについて法制化するなどの対応をとるべきだ。

福島原発事故と対応の不手際で政府や電力会社、科学者に対する国民の信頼は著しく損なわれた。日本の危機管理能力への不信の目は海外からも向けられた。

事故の原因を究明し教訓を得ることが信頼回復への第一歩だ。国会が初めて民間人による独立した調査機関を設け、政府の事故調とは異なる立場から調査をし、結果を内外に公表したのは意義深い。

ただ委員会発足が事故発生から9カ月後ではあまりに遅かった。調査期間も半年と短く、スタッフや技術的な検証に必要な機材も十分ではなかったようだ。事故調の経験は国会の国政調査機能を高める契機となりうる。どう生かすか、国会自身が問われる番だ。

事故調は延べ約1100人の関係者から聞き取り調査をし膨大な資料を蓄積した。これらの情報をさらなる検証に役立てることも重要だ。最大限の開示を求めたい。

未解明な事柄も多数残る。とりわけ地震による損傷の問題は原発の耐震対策を確かなものにするうえで見過ごすことができない。政府事故調などの「津波が主因」の見解に対し国会事故調は疑問を呈した。事故調解散後も、何らかの機関でより突っ込んだ調査が要る。その調査に東電は情報を余さず開示して協力すべきだ。

原発事故とは知らずに避難した住民がいたことが事故調の調べでわかった。防災体制の不備は、過酷事故の発生に目をつぶった「事なかれ主義」が原因だ。政府だけでなく福島県にも責任がある。

この点で原子力関連の法令を「国民の健康と安全を第一に考える法体系」に改めるとした報告書の提言には同意する。政府と電力会社、自治体などの役割分担を明確にし、防災を含め世界の最新知見を迅速に反映できる仕組みにすべきだ。

今回の報告書を改革の出発点ととらえ、不断の努力を関係者に求めたい。

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