ドコモが「プラチナバンド」でLTE投入 iPhone勢に対抗
仙台・新潟などで国内最速サービスも
NTTドコモは2012年末にも、「プラチナバンド」と呼ばれる800メガヘルツ(MHz)帯の電波を使ったLTEサービスを始める。10年12月から提供しているLTEサービス「Xi(クロッシィ)」では、現在2ギガヘルツ(GHz)帯だけを使用している。800MHz帯を追加することで、大都市圏でのLTEのユーザー増に対応する。
プラチナバンドをめぐっては、ソフトバンクモバイルが7月25日に900MHz帯を使ったサービスを始めたばかり。ただしソフトバンクのサービスは、現時点では第3世代携帯電話(3G)だけ。ドコモは3Gよりも高速なLTE向けにプラチナバンドの電波を充てることで、ソフトバンクモバイルに対抗する狙いもありそうだ。
今冬めど、都市部の電波強化図る
27日に開催された決算会見でドコモが明らかにした。新たにLTEで利用する800MHz帯の電波は上下各5MHz幅で、下りの通信速度は最大毎秒37.5メガビット(Mbps)。これまで3Gサービス「FOMA」で利用していた電波を、LTEのユーザーが増えている地域を中心に、全国で順次振り替えていく。
これまでドコモのLTEサービスは2GHz帯の電波だけで提供していた。電波の幅も、一部の施設内で上下各10MHz幅を確保できていたが、大半の地域は上下各5MHz幅に限られていた。LTEの契約数は6月末時点で332万となっており、13年3月末には1000万契約超と大幅な増加を見込んでいる。特に都心部でユーザー増が顕著になると予想されるため、新たに800MHz帯もLTE用に振り向けることで、より多くのユーザーが同時にLTEを使った高速通信ができるようにする。
仙台や新潟など5都市で、国内最速の112.5Mbpsサービス
併せてドコモは、LTE向けとして総務省から割り当てを受けている1.5GHz帯の電波を使い、地方部でLTEサービスを高速化する。具体的には、仙台、新潟、金沢、高松、那覇の5都市で、12年末から下り最大112.5Mbps、上り最大37.5Mbpsのサービスを開始し、それ以外の地方都市でも順次展開していく。
東名阪の大都市圏は1.5GHz帯の免許の制約上、当初は高速版LTEを展開できないが、東名阪エリアで1.5GHz帯が利用可能になる14年度に、下り最大112.5Mbpsのサービスを開始する。
1.5GHz帯では上下各15MHz幅と、2GHz帯の屋外よりも3倍の広さを確保でき、しかも現時点では未使用である。この1.5GHz帯をフル活用することで、LTEの大幅な高速化を図る。ソフトバンクモバイルが「SoftBank 4G」で9月に下り最大110Mbpsの端末の発売を予定しているが、ドコモの高速版LTEはこれを上回る通信速度となる。
800MHz帯、1.5GHz帯とも、ドコモが年末商戦向けに発売するLTE対応スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)の新機種で対応予定。対応端末の発売に合わせて、新たな電波でのLTEサービスを始める。
今秋の「LTE版iPhone」に備える
LTEサービスはドコモが10年12月に商用サービスを開始し先行していたが、12年に入り他社が追随の動きを見せている。イー・アクセス(イー・モバイル)が3月にLTEを開始したほか、KDDI(au)とソフトバンクモバイルも秋に参入を予定している。
特にKDDIはLTEで、全国で800MHz帯と2GHz帯、さらに大都市圏では1.5GHz帯も併用し、大量の基地局を一気に整備することで、ドコモを追い上げる構えを見せている。「実際の通信速度がどの程度出るかで競合他社と勝負することになるだろう」(KDDIの田中孝司社長)と自信を示す。
また、12年秋には米アップルの「iPhone」でLTEに対応した新機種が登場することが見込まれており、これまで同様にKDDIとソフトバンクモバイルが発売するとみられる。ドコモはiPhoneの取り扱いについて「現状では難しい」(ドコモの加藤薫社長)との認識を繰り返し表明しており、ユーザーが「LTE対応のiPhoneを使いたい」としてドコモから他社に流出する懸念もある。
ドコモはパケット料金の実質値下げや端末購入時の割引施策などを打ち出すとともに、電波の整備や高速版LTEの展開などで、12年末から13年春にかけての商戦期に差異化を図る。
(電子報道部 金子寛人)