政府のエネルギー戦略、素材産業が懸念
政府がエネルギー・環境の中長期戦略に関して6月下旬に示した3つのシナリオに対し、生産工程で電力を多く使う素材産業から懸念の声が相次いでいる。日本鉄鋼連盟(東京・中央)は20日、資源エネルギー庁の担当者を招いて都内で説明会を開催した。参加者からは「電力を多く使う産業では死活問題になる」といった不満の声が相次いだ。
政府は2030年の原発依存度を0%、15%、20~25%の3案としたエネルギー・環境戦略の選択肢を公表。30年の1キロワット時当たりの発電コストは原発ゼロの案で10年に比べ6.5円上昇、15%と20~25%の案で5.5円上昇する見込みだ。
エネ庁の担当者の説明を受けた参加者からは「年間8億キロワット時の電力を使っている。6円上昇でも負担が48億円増え、経常利益額を上回る規模になる」(電炉大手)などと影響の大きさを懸念する声が出た。「電力に占める再生可能エネルギーの比率を25~35%に引き上げるという目標は達成可能なのか」と疑問視する声も出た。
日本製紙連合会の芳賀義雄会長(日本製紙グループ本社社長)も20日の記者会見で「エネルギー源に乏しい日本の状況をどう克服し、安定したコストの安い電力を生み出していけるかが重要」と指摘。現在の3つの案については「数字の話が先に来ているが、まず国のあり方を議論すべきだ」と批判した。