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米GE イメルトCEO 原発"見切り"発言の衝撃度

編集委員 安西巧

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米ゼネラル・エレクトリック(GE)最高経営責任者(CEO)、ジェフ・イメルト氏の原子力発電に対する発言が話題になっている。東京電力福島第1原子力発電所の事故をきっかけに原発のコスト上昇が見込まれる一方、多くの国が地中深くの岩盤から採取する新型天然ガス「シェールガス」や風力に発電用エネルギー源をシフトすると予見。原発は「(経済的に)正当化するのが非常に難しい」と英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)のインタビュー(7月30日付記事)で語った。2011年9月に独シーメンス社長、ペーター・レッシャー氏が独誌シュピーゲルのインタビューで表明した「原発事業撤退」に続く米欧電機大手トップの衝撃発言。「選択と集中」の本家ともいえるGEの"変わり身の早さ"は、原発事業のパートナーである日立製作所をはじめ日本勢の経営戦略にも影響を与えずにはいられない。

イメルト氏が世界のエネルギー情勢を展望した上で強調したのは米国でのシェールガス革命、日本における福島原発のメルトダウン(炉心溶融)、再生可能エネルギーの価格下落――の3点。具体的には、天然ガスはシェールガス革命で10年来の安値水準で推移しており、原発産業は「福島」後の追加コストと不確実性に直面、そして太陽光パネルは過去3年間で75%値下がりした結果、数カ国で小売り電力として価格競争力を持ちつつあるとFTの記事は言及している。

GEは7月に主力のエネルギー・インフラ部門の組織再編を発表したばかり。従来同部門の事業を統括していた「GEエナジー」(売上高500億ドル、人員10万人)を廃し、新たな社内分社として「GEパワー・アンド・ウオーター」(280億ドル、4万1000人)「GEオイル・アンド・ガス」(150億ドル、3万3000人)「GEエナジー・マネジメント」(70億ドル、2万7000人)の3社を年内に発足させる。「階層を減らすことで集中力、機動力を高める」(イメルト氏)方針で、同部門の業績を一段と伸ばし、欧州危機に端を発した航空機エンジン事業や医療機器事業の不振をカバーするのが狙いのようだ。

中国、インド、ブラジルをはじめ新興国の経済成長などによる世界的な電力需要の拡大を背景に、GEは前述した火力発電用ガスタービン、風力発電用風車、さらにスマートグリッド(次世代送電網)技術を生かした広範な電力インフラ設備などの一括受注を狙い、世界市場で攻勢をかける体制を固めたとみられる。

7月20日に発表したGEの12年4~6月期決算は、売上高が前年同期比2%増の365億100万ドル、純利益が18%減の31億500万ドルと全体では振るわなかったが、部門別でみると、エネルギー・インフラ部門は売上高が15%増の119億1900万ドル、純利益が13%増の17億5500万ドルと例外的に高い伸びを示している。

周知のように、商業用原発は大別して沸騰水型(BWR)、加圧水型(PWR)の2タイプがあり、BWRを開発したのがGEで、PWRの開発元は米ウエスチングハウス(WH)。ただ、米国内では1978年のスリーマイル島原発(ペンシルベニア州)事故により、今年2月にボーグル原発(ジョージア州)3、4号機の増設が認可されるまで、実に34年間も原発の新規プロジェクトが凍結されていた。このため原発ビジネスは米国発祥でありながら、米企業における存在感はさほど大きくはない。

WHは99年に原発部門を商号ととともに英国核燃料会社(BNFL)などに売却(本体は系列の米放送大手CBSを主力事業に、社名もCBSに変更)、06年に東芝がBNFLからWHを買収し、傘下に収めた。要するに13年前からWHは"外資"を親会社に持つ米国企業であり、現在では東芝の子会社ということで日本勢の一角ともいえる。

一方、GEは06年に日立との原発事業の統合を発表。07年になって日本国内の原発建設・保守・サービスを手がける「日立GEニュークリア・エナジー」(茨城県日立市、出資比率は日立80%、GE20%)、日本以外の世界各地で原発の新規建設受注を目指す「GE日立ニュークリア・エナジー」(ノースカロライナ州、GE60%、日立40%)という合弁会社をそれぞれ設立し、現在に至っている。

06年当時、米国ではジョージ・W・ブッシュ政権下で原発の再評価が進み「原子力ルネサンス」と呼ばれていた時期。GEはスリーマイル島事故以後の長いプロジェクト凍結期間を経て、すでに原発事業では製造部門を持たず、サービス・エンジニアリング会社に転換していた。かつてBWRの「教え子」として技術を供与した日立に原子炉容器や蒸気タービンの製造を委託することで、息を吹き返しつつあった原発プロジェクトを受注できる体制を急ごしらえで再構築したように見えた。

米原子力規制委員会(NRC)が今年2月に建設を認可したボーグル原発3、4号機、3月に認可したV.Cサマー原発(サウスカロライナ州)2、3号機の受注競争で、GE=日立陣営はいずれも東芝=WH陣営に敗れている。先のFTの記事では現在のGEの原発事業の売上高は約10億ドル(約790億円)で全体の売上高の1%にも満たない水準と報じられている。

イメルト氏はもともと資金面や周辺住民対策など政府への依存度の高い原発ビジネスに冷ややかな姿勢が目立ち、今年3月に米ヒューストンで開かれたエネルギー業界最大の会議「CERAウイーク」での講演でも「『原子力ルネサンス』というものは(福島の)事故の前からそもそも存在していなかった」と批判的な発言をしている。政府への依存度が高いということは、ビジネス基準で物事が決められない「不確定要素」が大きいということだ。

そんなイメルト氏の姿勢が世界の原発市場におけるGE=日立連合の「劣勢」を象徴しているように見える。今年6月、日立は海外初の原発プラント受注に向け、リトアニアのビサギナス原発(21年稼働予定)に関する建設事業権契約を結んだ。参画企業に「日立GEニュークリア・エナジー」の名があるものの、「現地の原発事業会社への出資額が焦点になっているリトアニア案件にGEは距離を置いている」と原発ビジネスの事情に詳しい業界関係者は指摘する。

実際、福島事故後のドイツなどの「脱原発」の動きに加え欧州債務危機の影響などで、当初はリトアニアの原発事業会社への出資が見込まれていたラトビアやエストニアなど周辺国が資金拠出に難色を示す可能性が出てきている。その場合、数百億円とみられる日立の出資額がさらに膨らむ恐れがあるといわれているのだが、パートナーであるGEが果たして応分の負担をするのかどうか。

7月になってリトアニアは原発建設の是非を問う国民投票を10月14日の総選挙と同時に実施することを決定。福島事故をきっかけに国民の一部に原発建設反対の声が広がっているためで、イメルト氏が難色を示す政府への依存度、すなわち「不確定要素」が高まっていると解釈できる。そんなリスク要因の大きい原発ビジネスには深入りしない、というのが今回のイメルト氏の「原発は(経済的に)正当化が難しい」との発言の真意のように思える。

イメルト氏が前任者のジャック・ウェルチ氏に代わってGEのCEOに就任したのは01年。以後、05年の保険会社GEインシュランス・ソリューションズの売却、07年のプラスチック事業売却、11年のメディア企業NBCユニバーサルの保有株過半売却など非戦略部門を切り離す一方、最近では10年からの2年間で100億ドル(約7900億円)以上を投じてロシアやオーストラリア、ブラジルなどでエネルギー関連企業のM&A(合併・買収)を進めている。

時代の趨勢を見極めた「選択と集中」は、ライバルの独シーメンスの戦略とも共通する。現CEOのレッシャー氏は07年に就任。原発事業を有望と見て、少数株主の地位に甘んじていたフランスのフラマトム社(現アレバNP)との原発合弁を解消し、09年にロシアのロスアトム社との新たな合弁会社設立を決めた。ところが、福島事故の3カ月後の昨年6月に自国ドイツのメルケル政権が22年までに全原発を停止する「脱原発」の方針を決定すると、9月にはシーメンスの「原発撤退」を表明。この時もトップの"変わり身の早さ"が内外のビジネス界で話題になった。

シーメンスも原発以外に多くの事業からの撤退例がある。05年に携帯電話、07年に自動車部品、09年にパソコン、11年にIT(情報技術)サービスといった事業を売却・撤退している。日本企業にありがちな「会長や社長の出身部門やトップが関わったプロジェクトだからやめられない」といったウエットな感情はGEやシーメンスにはない。だからこそ、成長が見込めなかったり、戦略性が乏しくなった事業に迅速に見切りをつけたりすることができる。シーメンスに続いてGEも見切った感のある商業原発。世界の電力ビジネスの構図は大きく様相を変えつつある。

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