中国当局は冷静、ネットには強硬論 尖閣上陸問題で
外務省「日本政府と交渉中」
【北京=島田学】中国の国営新華社によると、中国外務省は15日夜、尖閣諸島(沖縄県石垣市)に上陸した香港の団体「保釣行動委員会」のメンバーらの逮捕を受け、抗議を申し入れるため「日本側と緊急に連絡を取り交渉を進めている」との談話を発表した。
中国の国営中央テレビや国営新華社は「釣魚島への上陸に成功した」と速報で伝えた。インターネット上の書き込みの中には「続いて人民解放軍も出発だ」といった強硬論が目立つ。
ただ、中国の外交当局は「2004年の前例もあり、逮捕までは織り込み済み」と比較的冷静な対応を続けている。中国外務省の秦剛報道局長も抗議船が日本領海に侵入する前に談話を公表。「日本が(抗議船の)中国人とその財産の安全を脅かすことのないよう求める」とし、10年の中国漁船衝突事件のような船同士の衝突を避けるよう暗に求めていた。
中国外交筋は「『日中関係を考えて上陸するな』とは言えない。ただ、船同士がぶつからなくて良かった。不測の事態は避けたい」と語った。
ただ、中国本土の外交当局はこれまでも、対日強硬姿勢で知られる香港を拠点とする「保釣行動委員会」と一定の距離感をもって関係を維持してきた。日中関係の改善が必要なときは、過激な行動を抑制するよう間接的に促し、一方で、日本へのけん制を狙っているときや硬化する中国国内世論の留飲を下げる必要がある場合は、強硬姿勢を容認してきた。
そのため今回の活動家の尖閣諸島上陸にも、尖閣国有化方針を掲げる日本をけん制したい中国政府の思惑が働いているとの見方も多い。