宇宙や物質の成り立ち、解明に前進 ヒッグス粒子
世界の物理学者が40年以上も追い求めてきた最後の素粒子「ヒッグス粒子」の存在が4日、確実となった。欧州合同原子核研究機関(CERN)は「精査が必要」とするが、歴史的な発見は間近だ。宇宙の成り立ちや物質の正体を解き明かす素粒子物理学の基本ルール「標準理論」の"最後のピース"が埋まり、同理論の正しさが証明されることになる。
1970年代半ばまでにほぼできあがった標準理論によると、宇宙誕生の大爆発ビッグバンの直後、生じた素粒子は質量がゼロで、光の速さで飛び回っていた。
宇宙が急速に膨張して冷えると、ヒッグス粒子が宇宙空間を満たすように発生した。これが素粒子に水あめのようにまとわりついてブレーキをかけた。この動きにくさによって、質量を持つようになったと考えられている。
光の速さで飛び回っている間は、素粒子はぶつかってもくっつくことはない。質量が生まれたことで、素粒子同士が集まりやすくなった。素粒子が集まるようになった結果、原子核ができ、水素などの原子が宇宙空間で生まれた。
水素などの物質のガスが集まって星が誕生し、それらが多数集まって銀河になった。そうした過程で、地球上では生命が誕生し、今の世界ができあがった。
ヒッグス粒子が「神の粒子」といわれるのは、宇宙や物質の成り立ちに大きくかかわるからだ。正式に発見となれば、宇宙がどんな素粒子で構成され、どのように力が働いているかという現代物理学の最大の疑問の解明に一歩近づく。
しかし、私たちの身の回りにある物質は宇宙全体の中では4%にすぎない。正体不明の「暗黒物質」が宇宙を満たしているとされるが、今の標準理論では説明できない。
標準理論を超える新しい理論では、暗黒物質は未知の素粒子でできていると予想されている。今回の成果で、こうした素粒子の探索にもはずみがつきそうだ。