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復活したスマホの老舗~PHS事業者ウィルコムの軌跡

編集委員 関口和一

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2010年に会社更生法適用を申請し、ソフトバンクの傘下に入ったウィルコムの業績が回復している。新規契約から解約を引いた2011年度のPHSの純増数は約80万件と4年ぶりに増加、累計契約数も6月末で約470万件と過去最高を記録した。10分以内なら月500回まで無料で話せる「誰とでも定額」が人気の理由だが、先月発売したPHSと携帯電話とのハイブリッド・スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)の出足も好調だ。ウィルコム復活の軌跡を追った。

ハイブリッド・スマートフォンは、通話品質の高いPHSと高速データ通信が可能な第3世代携帯電話(3G)の通信機能を搭載した端末で、京セラが開発した。ハイブリッド型のスマートフォンは2010年にもシャープが米マイクロソフトの基本ソフト(OS)「ウィンドウズモバイル」を使った製品を発売したが、ウィルコムの経営破綻で立ち消えとなってしまった。今回はソフトバンク主導のもと、米グーグルの携帯向けOS「アンドロイド」を使い、再登場した。

長年、PHSを使ってきた記者も早速、使い勝手を試してみた。外見は京セラの携帯ブランド名の「DIGNO(ディグノ)」を掲げ、一見しただけでは通常のアンドロイド端末と見分けはつかない。唯一の違いは、バッテリーの残量などが表示される画面上のところに、電波強度を表すマークがPHSと3Gの2つある点だ。すなわち常にPHSと3Gの電波を2つ受信し、通話ではPHSもしくは3G、データ通信では3Gの回線が使われる。電話番号も「070」で始まるPHSと携帯電話の両方の番号が与えられる。

ウィルコムが「話し放題スマートフォン」という通り、人気の理由はスマートフォンでも「誰とでも定額」が使える点にある。基本料が1台分で済むため、データ定額料金を払っても、月額7000円以内で通話もデータ通信もほぼ使い放題となる。携帯電話の通話料金を抑えるため、PHSとスマートフォンを2台持つユーザーも多いが、それよりさらに安くなる計算だ。

 実際に持ち歩いた感想でいえば、スマートフォンでPHSのクリアな音質で通話できるのは新鮮だ。PHSの場合、山間部などに行くと電波が入るかどうか常に気になっていたが、そうした心配からも解放される。アドレス帳やカレンダーなどの情報を端末間で同期する必要がなくなるのもメリットだ。

逆にデメリットといえば、当然のことだが、スマートフォンを手帳代わりにしてPHSで通話することはできなくなる。通信機能が2つあることでバッテリーの消耗が速いという印象はなかったが、持ち時間は気になるところだろう。

通常のスマートフォンに比べ、特段不便だという点は見あたらず、通話料金を気にせず使えるスマートフォンというのは、その通りだといえる。

経営が悪化してから、ウィルコムは得意の通話専用端末に注力し、スマートフォン戦争の前線から離脱していたが、実は日本で最初にスマートフォンを発売したのは、ほかならぬウィルコムだった。3G技術の登場で携帯電話のデータ通信速度が劇的に速くなったが、それ以前は「PIAFS(ピアフ)」と呼ばれるPHSのデータ通信の方が速かった。それを生かして16年前の1996年に「データスコープ」という携帯端末を発売したのがウィルコムの前身、DDIポケットである。

スマートフォンといえば、今や米アップルやグーグルが市場をリードするが、通話機能がついた世界初のタッチパネル式スマートフォン「Simon(サイモン)」を94年に米国で発売したのは米IBMだった。前年にアップルが「ニュートン」を発売したことで、住所録や予定表などの電子手帳として使える「携帯情報端末(PDA)」がブームとなったのを受け、それに通話機能を搭載したものである。開発は三菱電機も担い、当時の地域電話会社だったベルサウスが通信網を提供した。

データスコープを開発したのは、今回、ハイブリッド・スマートフォンを開発した京セラだが、翌年97年には東芝が「GENIO(ジェニオ)」、松下電器産業(現パナソニック)が「ピノキオ」と名付けた携帯端末をそれぞれDDIポケットから発売、国内スマートフォン市場の先駆けとなった。だが残念ながら、99年に登場したNTTドコモの「i-Mode」により、携帯端末の主役にはなれなかった。

しかし、DDIポケットは2005年に社名を「ウィルコム」と改め、果敢にも新たなスマートフォンを発売する。「ウィンドウズモバイル」を採用した世界初の本格的なスマートフォン「W-ZERO3」である。

開発はPDAの「ニュートン」や「ザウルス」で技術力を培ったシャープが担当。マイクロソフトもスティーブ・バルマー最高経営責任者(CEO)が発売のタイミングに合わせて来日するという力の入れようだった。

 では、スマートフォンで先行したはずのウィルコムの端末は、なぜ普及しなかったのか。

ひとつの大きな要因は、3Gの高速データ通信が可能になった携帯電話が「フルブラウザー」と呼ばれるインターネットのウェブ閲覧機能を搭載し始めたことだ。ウィルコムの端末はマイクロソフトの「ワード」や「エクセル」のファイルが読めるのが売り物だったが、通信速度の絶対的な格差を埋めるまでには至らなかった。

ふたつめの転機は08年のソフトバンクによる「iPhone(アイフォーン)」の発売である。アイフォーンは海外ではその前年に第2世代携帯電話規格の「GSM」向けに登場し、人気を集めていた。キーボードでなく、指でなぞって操作するタッチパネル入力方式と、様々なソフトをネットから自由に取り込める機能が消費者の心をとらえた。

この2つめの転機はもちろん、ウィルコムだけでなく、国内市場で独特な進化を遂げていた「ガラパゴスケータイ」の殻をも打ち破ることになった。

こう振り返ると、ウィルコムだけでなく、日本の電機メーカーはスマートフォンの登場当初から世界の携帯技術を担ってきた。アップルの「ニュートン」に対抗し、電気専門店チェーンの「ラジオシャック」を展開する米タンディが93年に発売したPDA「ズーマー」も開発はカシオ計算機が担った。

それから20年近くを経た今、単独で携帯端末事業を手掛けているのは、シャープとパナソニック、ソニー、それに京セラくらいである。三菱や東芝、カシオはいずれも事業から撤退した。そのシャープやパナソニック、ソニーも現在はテレビ事業の不振から経営体制の見直しの渦中にあり、新しいスマートフォンの開発まで十分手が回らない状況にある。

しかし、日本が礎を築いてきたスマートフォン市場はぜひとも死守したいところである。その意味でウィルコムや京セラによるハイブリッド・スマートフォンの発売は重要な布石ともいえる。変化の激しい情報通信分野でアップルやグーグルの支配力がずっと続く保証はどこにもない。新しいウェブの記述言語「HTML5」が注目されているように、技術の転換点はこれからも常に起こりうる。その間隙に備え、日本勢にも今から技術の国際標準化やコンテンツの新しい配信プラットフォーム作りに取り組んでほしいものである。

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