運転免許で持病無申告の罰則議論 有識者会議
警察庁は31日、てんかんなど発作を伴う持病があり、運転に支障を及ぼす恐れのある人の運転免許制度を検討する有識者会議の設置を決めた。現行法では、一定期間発作がないなど条件を満たし、医師の診断書を提出すれば免許を取得できるが、無申告でも罰則はない。6月5日に第1回会合を開き、病気を申告しないケースに罰則を設けることの是非などを検討する。
有識者会議は学者や医師ら8人で構成。9月中をめどに、道路交通法改正などの提言をまとめる。罰則を設けることについて患者側は強く反対しており、患者支援団体や被害者遺族会から意見を聴き、慎重に判断する。
会議は、免許の取得や更新の際に申告すべき患者の症状の的確な把握や、患者自身が申告しやすい環境整備について議論。取得・更新時に無申告の場合に罰則を科すかどうかや、患者自身が申告しない場合に医師側から情報提供を受けることの是非などを検討する。
病気で免許を失効した人が、病状が緩和した際に免許を再取得しやすくする制度なども検討するとみられる。
てんかんなどの患者は2002年施行の改正道交法で、一定期間発作が起きていないことなどを条件に免許が取得できるようになった。
その後も事故は起きており、警察庁によると、昨年1年間に運転手の急病や発作が原因の交通事故は254件発生。原因別では、てんかんが73件、脳梗塞など脳血管障害58件、心臓まひ22件などだった。
今年4月に京都・祇園で、暴走した軽自動車にはねられた歩行者ら19人が死傷した事故で、事故との因果関係は不明だが、車を運転していた男はてんかんの持病を申告せず免許を更新していた。
栃木県鹿沼市で昨年4月、クレーン車を運転していた男がてんかん発作を起こし、小学生6人をはねて死亡させる事故でも、男が持病を無申告で免許を更新していたことが判明。遺族は今年4月、持病を隠して運転免許を不正に取得できない制度の確立や、量刑が重い危険運転致死傷罪の適用などを求める署名を国家公安委員長や法相に提出している。