素粒子物理学「南部理論」、50年来のナゾ解明
東大など
東京大学などの研究者が8日、2008年にノーベル物理学賞を受賞した南部陽一郎・米シカゴ大学名誉教授の素粒子物理学の「自発的対称性の破れ」と呼ばれる理論で残っていた50年来の謎を解明したと発表した。南部理論が当てはまらなかった宇宙や物質などの現象も含めてすべて扱える新しい理論で、米科学誌フィジカル・レビュー・レターズ(電子版)に掲載される。
発表したのは米カリフォルニア大学バークレー校大学院生の渡辺悠樹さんと東京大学国際高等研究所の村山斉・カブリ数物連携宇宙研究機構長。
1961年に提唱された南部理論は、物質にはなぜ質量があるのかという根源的な謎を説明するヒッグス粒子のヒントにもなった画期的な理論で、様々な研究分野に大きな影響を与えた。ただ、もともと絶対温度ゼロの真空中の素粒子を対象にした理論で、温度や密度がある宇宙初期の現象や磁石など物質の性質では、そのまま当てはまらないケースもあった。
今回、渡辺さんらは当てはまらない物理現象にまで南部理論を拡張し、統一的に説明できる定理を見いだした。宇宙誕生の謎の解明や最先端の物質科学研究などに役立つと期待される。