オール電化割引、東電に廃止要請 経産省専門委
家庭向け料金上げ巡り
経済産業省の電気料金審査専門委員会は2日、台所や風呂のエネルギーも電気でまかなう「オール電化」の家庭向けの料金割引を廃止するよう東京電力に求めた。特定の機器を購入した家庭だけを優遇する料金制度は不公平だと判断した。専門委が同日示した、東電の家庭向け値上げの査定方針に盛り込んだ。
オール電化は、ガスを使わず給湯や空調など家庭内のエネルギーをすべて電気をまかなうことを指す。東電によると、オール電化住宅は102万件に上る。夜間にお湯を沸かしたりするために、発電コストが安い原発の夜間電力を有効に利用できるとして、料金を割り引いている。
ただ、機器によるピークシフト効果は定量的にわからない。機器購入を条件とせず、より幅広い家庭に「昼は高く夜は安い」料金プランを提供すれば、最大使用電力を抑えられる。オール電化割引を続ける意義が乏しいと専門委は判断した。
ただちに廃止すると混乱を招くため、既存の契約者には十分な周知期間を設ける。また、東電が今夏、中小商店向けに用意した最大使用電力を抑える料金プランについて、一般家庭が最大使用電力を抑えた場合に恩恵が及ぶよう方策を検討することも求めた。
一方、人件費など個別原価の査定では、おおむね原価算入を認める方向を打ち出した。
事故を起こしていない福島第1原発5、6号機、福島第2原発の計6基について東電は減価償却費などを原価に計上したが、専門委では「再稼働の可能性がないので計上すべきではない」との指摘があった。査定方針では「(6基の原発が)再稼働しないと判断できない」と指摘し、原価計上を「一定の合理性がある」と結論づけた。
東北電力と日本原子力発電の原発に支払う費用も「原価算入を認めることが適当」とした。現在は原発が止まって電力を買っていないが、東電は基本料金として年1000億円を支払う契約であることが批判されていた。専門委は「共同開発した原発なので東電も費用を負担する義務がある」と評価した。
専門委がコスト圧縮を求めたのは、利払い費や配当にあてる事業報酬。原発事故を起こした東電は市場から「投資リスクの高い企業」と見なされ、資金調達に多めの利払い費がかかる。事故を起こしていない他電力の事情も加味することでコストの圧縮を求めた。健康保険料の事業主負担も抑えるよう求めた。
人件費は、諸手当も加えると従業員1000人以上の企業平均の水準を下回ることから「妥当」と判断した。ただボーナス相当額の支給など人件費は利用者の批判が集中する。枝野幸男経産相は「消費者庁などの意見をふまえ政治判断する」としており、消費者庁との調整で削減幅が上積みされる可能性もある。
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