スペイン、銀行支援をEUに申請 条件巡り駆け引きも
【マドリード=竹内康雄】スペイン政府は25日、欧州連合(EU)のユーロ圏諸国に銀行部門への支援を正式に申請した。今後の焦点は支援の条件交渉に移る。期限はスペイン政府とユーロ圏諸国が覚書を結ぶ7月9日まで。政府は支援期間や方法などで有利な条件を引き出す構えだが、ユーロ圏諸国には自国の損失につながりかねない条件に慎重な国が多く、両者の激しい駆け引きが続きそうだ。
スペイン政府は25日、ユーロ圏諸国に書簡を送り、銀行支援を要請。デギンドス経済相は支援内容について「適切な条件を要請する」と指摘。支援の方法については、政府系機関の銀行再編基金(FROB)を通じて実施されると言及した。
具体的な支援額は今回の書簡には含まれていないが、スペイン政府と同国中銀は21日、銀行部門への第1次監査結果を公表。国内銀行全体で今後3年で最大620億ユーロの追加資本が必要になるとの試算を示している。
ユーロ圏諸国は9日、同国銀行部門に最大1000億ユーロの支援の用意があると表明済み。スペイン政府は「最高額と比べ(620億ユーロは)余裕がある水準」と説明し、市場の不安払拭につなげる考えだ。
正式申請を受け、スペイン政府とユーロ圏諸国はどのように支援を進めるかの条件交渉に入る。支援条件は7月9日までに結ぶ覚書に盛り込む。
スペイン政府は銀行部門の再建を着実に進めるため、できるだけ長期で低利の融資を引き出そうとする。デギンドス経済相は22日、期間は15年以上で貸付利率は3~4%になると説明。「(返済期間が)5年や10年では現実的ではない」とも語った。一方、ユーロ圏諸国は期間10~15年、利率は3%で調整を進めているとの地元紙報道もある。
スペインへの支援は銀行部門に限定されているため、ユーロ圏諸国は財政健全化や構造改革に関する厳しい支援条件は課さない考え。ただ、スペイン政府に金融機関の再編計画などを求める可能性はある。
欧州委員会のレーン副委員長(経済・通貨担当)は25日の声明でスペインによる銀行支援申請を歓迎したうえで「支援のための覚書は数週間で合意できると確信している」と指摘した。
金融市場ではギリシャやアイルランドに続き、ユーロ圏第4位の経済規模を持つスペインが支援申請に追い込まれたことで、危機の波及がイタリアに及ぶのを阻止できるかが焦点となっている。