大飯原発の再稼働を政府決定
野田佳彦首相と枝野幸男経済産業相ら3閣僚は16日午前、首相官邸で協議し、関西電力大飯原子力発電所(福井県おおい町)3、4号機の再稼働を正式に決めた。福井県の西川一誠知事が再稼働への同意を表明したためだ。国内のすべての原発が止まった状態はほぼ2カ月ぶりに解消する。関電の管内で、予期せぬ停電などを通じて暮らしや企業活動が深刻な打撃を受ける危険性はやわらぎそうだ。
首相は協議で「再稼働することを政府の最終判断とする」と語った。そのうえで「政権として原子力行政への国民の信頼回復に向けてさらなる取り組みを進める決意だ」と強調した。
協議に先立ち、首相は西川知事と会談。知事が「国の安全確保のいっそうの努力と支援の約束を頂いたので(再稼働に)同意する決意を伝えたい」と述べたのに対し「決断に深く感謝申し上げる」と謝意を表明した。知事は再稼働への消費地の理解を深めることや、日本海側の津波や地震の調査推進など8項目の要望も首相に伝えた。
昨年3月の東日本大震災で東京電力福島第1原発の事故が起きてから、原発の運転再開が決まったのは初めて。国内にある原発50基は北海道電力泊原発3号機(北海道泊村)が5月5日に定期検査に入って以来、約42年ぶりに全基が運転停止となっていた。
政府が大飯原発の再稼働を正式に決めたのを受け、関電はただちに準備作業に入った。最初の3号機のフル稼働まで約3週間かかり、次の4号機も含めると2基が共にフル稼働するのは最短で7月24日になる見通しだ。
政府などの試算によると、大飯原発が再稼働しなければ関電管内では猛暑だった一昨年夏のピーク時に比べて15%の電力が足りなくなる。無秩序に停電が起こる可能性が高まり、企業の経済活動や家庭生活に支障が出かねない情勢だった。再稼働により、こうした最悪の事態は避けられる公算が大きくなった。
ただ、関電の見通しでは一昨年並みの猛暑になれば、昨年の節電効果を反映しても8月の電力需給の余裕度を示す「予備率」はゼロになる。このため、需給が逼迫した場合に備えて関電は事前に時間や対象地域を決めて停電を実施する「計画停電」の準備は続ける。
政府は早期の大飯再稼働をめざしていたが、立地自治体の福井県の同意を得られなかっただけでなく、消費地である周辺自治体が慎重な姿勢を崩さなかったため、手続きが滞っていた。
首相は経済活動やエネルギー安全保障の観点から「原発は重要な電源」と表明しており、運転を止めているほかの原発の再稼働もめざす方針。年内は伊方(愛媛県)、泊(北海道)の2原発の再稼働が課題になる。
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