スペインの銀行支援、ユーロ圏財務相が緊急協議へ
市場の不安払拭へ
【パリ=竹内康雄】欧州連合(EU)のユーロ圏財務相は9日、緊急の電話会議を開き、金融不安に揺れるスペインへの支援策を協議する。ユーロ圏の資金を使い、不良債権処理に苦しむスペインの銀行への資本注入を検討する。欧州全体でスペインを支援する姿勢を示し、金融市場の不安を払拭する狙いだ。
ユーロ圏の財務相は日本時間9日午後11時から電話会議を開く。ユーロ圏の財務相は電話会合後に、スペイン支援を実施する用意があるとの声明を出す方向で調整している。国際通貨基金(IMF)は8日、スペインの金融機関は最低400億ユーロの資本増強が必要になるとする報告書を公表。IMFがスペインの国内銀行の資本不足を具体的に分析したことで、スペインの支援に向けた環境は整いつつある。
スペイン政府当局者は9日、仏AFP通信に「報告書を分析している」と述べた。複数の欧州メディアによると、同国は同日中にも支援要請する可能性がある。ただ経済省報道官は9日午前の段階で、仏AFP通信に対し「(支援要請などの差し迫った決定は聞いていないという)昨日と状況は変わらない」と述べ、態度を保留している。
スペインが支援要請に踏み切れば、一連の欧州危機ではアイルランド、ポルトガル、ギリシャに次いで4番目に支援を受ける国になる。スペインは前の3カ国と異なり、EUとIMFの監督下に入る形での直接支援には慎重で、銀行部門に限った支援になる見通しだ。
具体的な支援枠組みは今後詰める。欧州金融安定基金(EFSF)や7月に発足する欧州安定メカニズム(ESM)からスペインの国内銀行に直接、資本注入する案などが浮上。現行制度ではいったん各国政府に資金を融資した上で、銀行に資金を注入する形になるが、この場合、政府の一時的な財政負担につながるからだ。ただ銀行が破綻した場合、EFSFなどに損失が生じる恐れがあるため、スペインの政府保証を付けるべきだとの慎重論も根強い。
スペインでは不動産バブル崩壊の影響で、大手銀行バンキアが190億ユーロの支援を要請するなど、政府は公的資金注入の原資を用意する必要に迫られている。欧州系格付け会社フィッチ・レーティングスも7日、スペイン国債の格付けを3段階引き下げた上で、600億~1000億ユーロ規模の政府負担が生まれる可能性があると試算した。