財政統合を加速、EU首脳が公約
【ロスカボス(メキシコ)=赤川省吾】20カ国・地域(G20)の首脳会議(サミット)に出席する欧州連合(EU)のバローゾ欧州委員長は18日(日本時間19日未明)に記者会見し、「財政統合を深めていく」と述べた。会見に同席したファンロンパイEU大統領は第1弾として「まず金融行政の一元化に取り組む」と発言した。長引く債務危機の解決に向けてEU首脳が欧州統合の加速を公約した格好だが、その工程表はまだ見えておらず、議論は曲折しそうだ。
ギリシャで反緊縮派が勝利するという「最悪のシナリオ」は避けられた。だがユーロ参加国が資金繰り難に陥るたびに資金支援する「対症療法」では金融市場のユーロ不信を払拭できず、日米や新興国は欧州に抜本的な解決策を求めている。
バローゾ委員長は会見で「経済統合を完了させることが信認回復につながる」と語り、財政・経済政策の一元化が必要だとの認識を示した。最終的にはユーロ共同債の発行を含めた財政政策の統合を視野に入れている。
ファンロンパイ大統領は「(統合は)段階的に実施する」と述べ、まず6月末にブリュッセルで開くEU首脳会議で金融行政の一元化を提案する考えを示した。「欧州中央銀行(ECB)は10年かかると言っているが、それよりも前倒ししたい」とも語った。
ただ負担増を警戒するドイツなど欧州北部は統合加速には同意しても「南欧の財政再建が前提」との立場を崩しておらず、実現に向けた工程表作りでは欧州内での意見集約に時間がかかりそうだ。ファンロンパイ大統領は「(いつ統合が完了するかではなく、その)決心をすることこそが重要」と説明した。