検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

風力・太陽光、全量買い取りで大量導入へ 先行スペインの悩みに学ぶ

詳しくはこちら

2012年7月に再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度(以下、全量買取制度)が日本でも始まる。これにより近い将来、風力や太陽光など発電量が不安定な電力が商用電力の送電系統(以下、系統)に大量に入り込むことになる。

実はこうした状況を日本よりも先んじて経験している国がある。スペインだ。2012年5月9日、東京都内のホテルでスペイン大使館主催の「再生可能エネルギーフォーラム」が開催され、再生可能エネルギーの導入が進むスペインの状況が明らかにされた(図1)。「スペインは既に電力の約32%を再生可能エネルギーで発電している。その中で最も多いのは風力、続いて水力、最後に太陽エネルギーである」(スペインKPMG社 パートナー Antonio Hernandez氏)。一方、日本の再生可能エネルギー比率は10%程度であり、そのほとんどが水力発電である。水力は比較的安定した電源であるため系統への影響は少ない。

FIT制度で2兆円の赤字

「スペインの風力発電システムの設置容量は2010年に20GW(ギガワット)に達した。これは欧州で2番目、世界でも4番目の規模である。2012年末には23GWに増える見通しである。太陽光発電システムの設置容量は2010年末に4GWになり、欧州で2位、世界で3位の規模を誇る。太陽熱発電は2010年に1GWに達して世界トップ」(同氏)。

このように再生可能エネルギーの導入が急速に進んでいるスペインだが、これまでの道のりが順風満帆であったわけではない。

スペインは2007年に長期間にわたる高額な買い取り価格を設定したフィードインタリフ(FIT)制度を太陽光発電で導入した。その結果、2008年の太陽光発電システムの設置量は一気に2700MW(メガワット)に増えた(図2)。当初の目標だった371MWを1200MWに変更したが、結果的には変更後のさらに倍以上が設置されたことになる。

スペイン政府は、あわてて買い取り価格を下げるなど、投資ブームの沈静化に追われた。この予想を上回る太陽光発電システムの設置によって、電力を高額で買い取らなければならない配電会社は大幅な赤字に陥った。その債務額は206億ユーロ(約2兆1000億円)。スペイン政府が一時的に肩代わりしているが、今でもスペインにとっては大きな痛手だ。

2008年を境に温暖化ガスの排出量削減

そもそも再生可能エネルギーの導入には二つの目的があった。一つは、温暖化ガスの排出量の削減である。2005年に1990年比で約1.7倍にまで膨らんだ温暖化ガスの排出量は、再生可能エネルギーの導入が進んだ2008年に減少に転じ、2010年には2000年レベルにまで下がった(図3)。下げ幅の目標には及んでいないものの、当面の目的は達成された。

もう一つの目的は、エネルギーの国外依存度を下げることである。スペインは石油と天然ガスの99%以上を輸入に頼っており、大きなリスクを抱えている。これを少しでも軽減したいところだが、実際にはエネルギーの国外依存度は1990年の約64%から2005年には80%近くにまで上がってしまっていた(図4)。しかし、再生可能エネルギーの導入が進んだ2008年に減少に転じ、2010年には75%を下回る水準になった。まだ目的達成と言えるレベルではないものの、確実にリスク低減を進めつつある。

問題は山積みだが…

紆余(うよ)曲折はあったが、目的達成に向かって再生可能エネルギーの導入を進めるスペイン。しかし再生可能エネルギーの導入が増えたことで、解決しなければならない新たな問題が生じている。系統を安定させることである。

再生可能エネルギーは不安定な電源だ。例えば「スペインでは(天候の変化などにより)1時間のうちに再生可能エネルギーによる発電量が最大1万3000MWから150MWまで振れることがある」(同氏)。電力では供給と需要の規模を合わせないと電圧変動や停電の恐れがあって危険だ。つまり1万3000MWが150MWに急降下したら、その差の1万2850MWを他の電源で補わなければならないのである。

この問題をさらに大きくしているのは、再生可能エネルギーの発電量の予測精度が低い点だ。いつ1万2850MWの電源が必要になるのかが分からない。今後は予測精度を上げて、不安定な電源でも需要に見合うように電力供給を調整することが求められる。

その他にも、余剰電力を一時的にためる蓄電池や、隣国との太い連系線の必要性にも直面している。地方に分散する再生可能エネルギーの発電システムの多くが需要家から遠い場所にあることも問題として挙がっている。

こうした問題の中には、国レベルの系統に実際に接続してみて初めて分かるものもある。再生可能エネルギーの普及と活用が世界トップレベルで進んでいるからこそ、課題に直面し、対策が求められているのである。

系統への影響を本格的に議論へ

表1 調達価格・調達期間についての調達価格等算定委員会案(出所:調達価格等算定委員会)
電源調達区分税込価格調達期間
太陽光10kW以上42円20年
10kW未満42円10年
風力20kW以上23.1円20年
20kW未満57.75円20年
地熱1.5万kW以上27.3円15年
1.5万kW未満42円15年

冒頭で述べた通り、日本でも2012年7月から全量買取制度が始まる。4月末に調達価格等算定委員会から買い取り価格の案が提出された(表1)。その額は、発電事業者の提出していた希望価格にほぼ沿ったものだった。すなわちこの価格であれば投資して元が取れる水準なわけだ。同制度の開始によって再生可能エネルギーによる発電システムへの投資が大幅に増えることは間違いない。2008年のスペインのように、当初予想の7倍もの量が設置される可能性も否定できない。

再生可能エネルギーの導入が増えれば、スペインが直面している問題を日本も抱えることになる。いずれは、余剰電力を蓄えるための蓄電池、電力会社間での太い連系線の設置が必要になろう。不安定な電源への対応や発電量の予測精度向上といった課題を早急に解決すべく、本格的な議論を始める時が迫っている。

(日経BPクリーンテック研究所 菊池珠夫)

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_