離婚をスムーズに 弁護士・行政書士選びとお値段
東京都内に住む30代のA子さんは半年ほど前から離婚を考えている。勤務先や帰宅後にパソコンやスマホで離婚問題を専門に扱う弁護士をチェック。実績や料金、プロフィルを吟味したうえで、相談の申し込みフォームに必要事項を記入して送信した。
ネット経由で相談
「最近はインターネットのサイトを見てやってくる相談者が全体の9割。3カ所ぐらいの事務所を訪ねるのが一般的ではないか」と話すのは、離婚問題の解決で実績がある弁護士の中里妃沙子氏。
離婚を考えたときに相談相手としてまず思い浮かべるのは弁護士だろう。知り合いに弁護士がいれば相談しやすいが、いなければ探さねばならない。その際のツールがネットだ。弁護士や事務所がサイトで離婚相談や実績をアピールしており、気に入った弁護士を訪ねるのが主流だ。
日本弁護士連合会(日弁連)や各地の弁護士会も相談を受けている。日弁連では「ひまわりお悩み110番」という専用ダイヤルを設けた。電話すれば最寄りの弁護士会の法律相談センターにつながる。相談の概要を説明したうえで面談日や場所を予約する。自治体などでは無料相談を実施しているところもある。
弁護士への相談は事前予約制で、料金はおおむね30分5000円(税別)だ。中には初回無料のところもある。相談を経て、その弁護士に依頼するかどうかを決めればよい。中里氏によれば、離婚をする際のポイントは、まずは相手が同意しているか、次いで親権や養育費、面会交流の方法など子どもに関すること、そして財産分与や慰謝料、年金分割といったお金の問題だ。これらを当事者同士で協議する。もめれば弁護士の出番になる。
年間23万件に上る離婚のうち、87%は当事者同士で話し合って決める「協議離婚」だ。そして10%が「調停離婚」、残りが訴訟中に当事者が歩み寄る「和解離婚」、判決による「判決離婚」などとなっている。弁護士に依頼するのは「話し合いでは合意できず調停段階からという場合が多い」(弁護士の渥美雅子氏)。
というのも、協議離婚の段階では、話し合いでスムーズに解決するケースが少なくない。書類作成などの手続きも、弁護士以外に頼れる「士業」がある。行政書士だ。
行政書士も一案
行政書士は役所に提出する申請書類や契約書などの作成を業務としており、離婚協議書も含まれる。離婚協議書は養育費の金額や支払期間など合意した内容をまとめた契約書。いわば口約束で終わらせないための書類で公正証書にすれば拘束力も持つ。日本行政書士会連合会の調査では作成費用は平均約4万3000円(2010年度)だ。
ただし、行政書士は相手との交渉はできない。別れる夫婦がもめずに話し合えるなら、行政書士に頼んだ方が費用を抑えられるが、「離婚協議書作成の途中でもめた場合、弁護士を紹介することがある」と行政書士の露木幸彦氏は話す。
協議が不調に陥り、弁護士に依頼すると費用はいくらかかるのか。費用は弁護士と依頼者が話し合って決めるのが基本。ただし日弁連は費用のうち「着手金」と「報酬金」について目安を出している。
着手金は手続きを進めるために事前に払い、報酬金は成功の程度に応じて最後に払うお金だ。「離婚が成立し慰謝料200万円の支払いを受けた」場合なら、調停から依頼すると着手金20万円、報酬金30万円が最も多いパターン。調停不調で訴訟に進めば着手金10万円を追加するケースが多い。
ほかに収入印紙代や出張の際の交通費といった「実費」も必要だが、離婚調停は遠隔地への出張が少なく、訴額も小さいため、これらが膨らむことはあまり多くない。もちろん、着手金と報酬金の目安だけでも、合わせて50万円程度かかる。それ以上を想定しておく必要はある。
費用は個人差・地域差が大きく、依頼者が慰謝料など経済的利益を得た場合、その何%かを報酬金にプラスする契約もある。弁護士を選ぶ際は「いくらでどこまで対応してくれるのか確認したうえで、『委任契約書』を交わす」(弁護士の勝野めぐみ氏)ことが大事だ。(土井誠司)
「法テラス」活用で費用立て替え
弁護士を雇う経済的な余裕が少ない場合は、「法テラス(日本司法支援センター)」の活用が一案だ。無料の法律相談に加え弁護士・司法書士費用の立て替え(代理援助)を受けられる。
利用には月収や保有資産などの条件がある。離婚など夫婦間の紛争の場合、4人家族で本人の手取り月収が29万9000円以下、現金・預貯金300万円以下なら利用できる。相談を経て弁護士に調停の代理人を依頼する場合、費用(着手金8万4000~12万6000円、実費2万円)を無利子で立て替えてくれる。
立て替え金は毎月5000~1万円ずつ返済するのが原則。離婚が成立し解決金を得た場合は、そのお金で一括返済し、弁護士に報酬も支払う。
[日本経済新聞夕刊2013年12月10日付]