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"iPhoneなき"ドコモ、優良顧客引き留めへ2つの値下げ スマホ「マイナス4万5000円」も

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12年3月期の決算で、8期ぶりとなる増収増益を達成したNTTドコモ。総契約者数は6000万件の大台を突破し、スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)の販売台数も期初計画の600万台を大幅に上回る882万台を記録した。

しかし足元では、番号持ち運び制(MNP)によるKDDI(au)やソフトバンクモバイルへの契約流出が、過去最悪に迫るペースで進んでいる。劣勢を跳ね返すべく、窮余の策として打ち出しているのが、なりふり構わない2つの値下げ戦術である。スマートフォンの端末価格と、月々のパケット通信料金の大幅な値下げだ。

スマホ価格、実質0円どころか「マイナス4万5000円」

5月下旬のある週末。「ドコモのスマホ、他社から乗り換えで全機種実質0円!」という刺激的な店頭販促(POP)が、東京近郊の家電量販店やドコモショップの店頭を飾っている。かつて「0円端末」が全盛期だったころと比較しても、全機種というのは異例のこと。しかも実際には、0円どころか「実質マイナス」なのだ。

例えば、11年12月に発売され年末商戦の主力モデルであった韓国サムスン電子製の「GALAXY S II LTE」。東京都内の複数のカメラ系量販店では、割引前の端末価格は5万7960円。新規契約やドコモ端末からの機種変更の場合、購入後24カ月にわたり月々の通信料金を割り引く「月々サポート」が、月額2205円×24カ月で5万2920円適用され、差し引きの5040円が実質価格となる。

一方、MNPの場合は月々サポートによる割引が月額4305円×24カ月、合計で10万3320円と大幅に増額されており、実質価格はマイナス4万5360円だ。

12年3月の発売から、まだ2カ月しか経過していない最新スマホのソニーモバイルコミュニケーションズ製「Xperia acro HD」も破格だ。割引前価格6万480円に対し、新規契約・機種変更の場合の月々サポートによる割引は4万5360円(月額1890円×24カ月)で、実質価格は1万5120円。一方、MNPで他社から転入する場合は、月々サポートが9万5760円(月額3990円×24カ月)付き、実質価格はマイナス3万5280円という勘定だ。まさしく"出血"大サービスである。

パケット料金、ライトユーザーに格安プラン

端末価格の引き下げだけでも十分に驚きだが、ドコモはさらに値下げのプランを練っていることを明らかにしている。今や通信料収入の中核である、パケット料金に手を付けるものだ。

「あまりパケット通信をお使いにならない方に向けて、月々3ギガバイトまで割安に使えるXi(クロッシィ)のパケット料金を検討している。準備ができ次第発表する」(NTTドコモの山田隆持社長)――。

高速さを売りとするドコモのLTE方式の通信サービス「Xi」では、12年10月からパケット料金体系が準定額制になる予定。1カ月当たりのパケット通信のデータ量が7ギガバイトに達するまでは、月額5985円の定額料金で下り最大75メガビット/秒の通信が可能。月7ギガバイトを超えると、通信速度が128キロビット/秒と大幅に制限される。速度制限を解除することも可能だが、それには2ギガバイト当たり2625円の追加料金が必要だ。現在Xiを利用しているユーザーは、基本的にこの仕組みが適用されることになる。

 検討中の新パケット料金プランでは、定額制で使える上限を3ギガバイトに抑える代わりに、月額料金を5985円より低く設定する。スマホで動画の閲覧やパソコンと無線接続してのデータ通信(テザリング)を行わない、いわゆるライトユーザー層の獲得を狙うものだ。具体的な料金水準は明らかにしていないが、ソフトバンクモバイルがiPhone向けのパケット料金として提供している月額4410円に対し、どこまで競争力を発揮できるかが焦点となる。

このほか、7~8月に発売予定のシニア向け端末「らくらくスマートフォン」向けに、上限が月500メガバイトで月額2980円とさらに安いパケット料金プランを用意する予定だ。

業績は一見好調そうだが……

激烈な値下げの波状攻撃に、ドコモを駆り立てるものは何なのか。

足元のドコモの業績は悪くない。東日本大震災、11年夏から12年初頭にかけて相次いだ大規模な通信障害などのマイナス要因がありながらも、12年3月期決算は8期ぶりの増収増益。総契約者数は212万件増え、6000万件の大台を突破した。スマートフォンの販売台数は、期初計画の600万台を中間決算時に850万台へ上方修正し、最終的にそれも上回る882万台を記録した。13年3月期の業績見込みでも、売上高は対前年度比5%増、営業利益は同3%増と引き続き増収増益を見込む。

今やドコモの収益の柱となったパケット料金収入は、従来型携帯電話からスマホへの移行により急ピッチで増えている。12年3月期は対前年度比8.8%増、金額にして1490億円上積みし1兆8439億円となった。13年3月期はさらに2271億円、率にして12.3%増やし、パケット収入だけで2兆710億円と大台突破をもくろむ。

足元のスマホブームに乗り、好調に推移しているように見えるドコモの業績。しかし、ある指標だけは別の動きを示している。4月27日に開催された決算会見で山田社長はこんな発言をしている。

「12年3月期は、当社の契約者のうち80万件くらいが番号持ち運び制(MNP)で他社へ出て行ってしまった。何としても、その80万を半減くらいにしたい」――。

契約者は増えても、MNPでは減少

MNPによる転入数から転出数を差し引いた純増数(転入超)を四半期ベースでまとめたものが右のグラフだ。12年3月期の1年間で見ると、ソフトバンクモバイルは約53万件の純増、KDDIも約27万件の純増を記録したのに対し、ドコモは約80万件の純減と"一人負け"を喫している。

とりわけここ半年は一段と厳しい状況だ。11年9月まで、ドコモのMNPは単月で0~5万件の純減という水準を維持していたが、11年10月以降は下げ幅を拡大。12年3月は14万5900件の純減と、単月ではMNP制度が始まった直後の06年11月(16万3900件の純減)に次ぐ大幅な落ち込みとなった。

総契約数は212万件も増やしているのに、MNPでは80万件も流出。こんないびつな数字となるのは、携帯電話市場の質的変化が背景にある。

ドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの大手3社の携帯電話契約数を足し合わせると1億2400万件余りで、既に普及率はほぼ100%だ。そのため各社とも、現在の主な契約獲得の手段は、いわゆる2台目需要の掘り起こしだ。タブレット端末、モバイルルーター、デジタルフォトフレームなど多様な端末を用意するほか、複数台の契約を条件にしたセット割引で契約を促す。

 一方、MNPは手続きに2100円の手数料がかかる。それだけの金額を負担してもなお同じ電話番号を使い続けたいというユーザーは、メーン回線として長くサービスを継続しており、音声通話も頻繁に使うことが多い。

こうしたメーン回線は月額の利用料(ARPU)が高い上、メーン回線の事業者に合わせて家族回線や2台目回線を選ぶユーザーも多い。MNPによるメーン回線の流出を放置すると、月々の安定した料金収入が減ってしまうため、放置すれば企業体力が徐々にそがれる心配もある。

iPhone 4S発売で明暗、ドコモとKDDIのMNP

MNPでドコモからの流出がこれほど増えている理由は何か。11年10月以降という時期から想起するのは、やはりiPhoneの影響だろう。同月にiPhone 4Sの取り扱いを始めたKDDIのMNP転出入をひもとくと、それが裏付けられる。

ドコモのMNP純減が急増したのと同じ11年10月、KDDIのMNPは6万8700件の純増を記録。KDDIのMNPは10年春から11年夏まで純減が続き苦戦していたが、一気に盛り返した。単月で純増5万件の大台を突破するのは、およそ3年半ぶりだ。

KDDIのiPhone 4Sは、月額料金がソフトバンクモバイルより高めだが、それでも11年10月から直近の12年4月までKDDIは、MNPの純増数でソフトバンクモバイルを上回り3事業者のトップを走っている。

iPhoneの販売をめぐっては、米アップルが各事業者に大量の販売ノルマを課すことで知られている。各事業者はそのノルマを販売店に割り当て、未達の場合は以後の販売ができなくなるなど厳しい条件を課しているといわれる。11年10月を境に国内のiPhoneの販売が1社から2社に増え競争原理が生まれたことに加え、こうした販売ノルマの事情もありiPhone販売が加速。ユーザーがiPhoneに切り替えたことで、大手3社で唯一iPhoneを扱っていないドコモが割を食う形でMNPの大幅流出を招いた――。そんな背景が浮かび上がる。

「MNP流出の原因は、iPhoneよりおカネ」

しかし、ドコモの見立てはやや違う。「当社がMNPの転出者に調査したところ『iPhoneが欲しい』という人は全体の2割弱程度。残りの8割強は『価格が安い』『キャッシュバックがある』といった理由を挙げている」(山田社長)。

ソフトバンクモバイルは2009年2月から「iPhone for everybody」キャンペーンを継続的に展開しており、iPhone 4Sの16ギガバイト版を実質0円で販売。KDDIも11年10月のiPhone参入時からこれに追随している。さらに一部店舗では独自のキャンペーンを展開している。例えば「MNPで他社から乗り換え契約すれば3万5000円引き」「他社の中途解約金を負担します」といった内容だ。ほかにも、割引前価格を引き下げたり、32ギガバイト版・64ギガバイト版も実質0円で販売するなど多彩である。

これに対し、ドコモのスマホは11年の年末商戦ころまで、実質価格で2万~2万5000円程度。発売から1年程度経過した旧機種でも1万円程度で販売していた。12年に入り一部機種で月々サポートを上積みし実質価格を引き下げたが、それでも価格差を十分に埋め切れなかったようだ。

ここ半年でスマホを新規に購入したライトユーザーの多くは、「是が非でもiPhoneが欲しいと思った」というより、「安いスマホを買おうと検討したら、たまたまiPhoneが一番安かったのでそれにした」という方が多いとみられる。

 月額の通信料金も、ドコモの競争力は十分といえない。スマホの利用で必須となる月々のパケット定額料をまとめたものが右の表だ。ドコモの第3世代携帯電話(3G)回線では5460円。LTEサービス「Xi」の回線は、9月末までのキャンペーンで4935円で、それ以降は5985円としている。

携帯3社のパケット定額料
事業者回線・端末の種類月額料金
NTTドコモ3G5460円
LTE4935円※
KDDI3G・iPhone5460円
3G・Android5460円
WiMAX・Android5985円
ソフトバンクモバイルiPhone4410円
Android5460円

一方、ソフトバンクモバイルはiPhone向けに4410円と格安のパケット定額料を打ち出している。またKDDIは、同社の固定回線と携帯回線をセットで契約すると、2年間にわたり月額1480円割り引く「auスマートバリュー」を3月に始めている。

「値下げ競争の泥沼に陥りたくはないが……」

「基本的に値下げ競争の泥沼に陥りたくはない。とはいえ、端末価格はユーザーが注目する重要なポイントだと考えている」(山田社長)――。

端末価格と月額の利用料金の両面で他社の猛攻を受け、MNP流出が止まらないドコモ。価格競争には消極的だったが、年末商戦から春商戦にかけての惨憺(さんたん)たる状況を見て背に腹は代えられないと覚悟を決め、安値での対抗に乗り出したようだ。

山田社長は、4月以降の月々サポートの大幅増額がMNPの実績に効き始めていると明かす。「月々サポート増額がユーザーに浸透するまで時間がかかり、4月はそれほど効果は出なかったが、5月前半はMNPの転出ペースが4月より25%くらい減ってきている。確実に効果は出てきている」

しかし山田社長が懸念する通り、価格競争の泥沼は、ひとたび入り込むと抜け出すのは容易ではない。

ドコモは、6月から順次発売されるスマホの新機種では、月々サポートの割引額を圧縮して実質1万~1万5000円とし、冒頭のような極端な値下げを行わない方針だ。とはいえ消費者は価格に敏感だ。iPhoneの実質0円は今後も続くと予想され、価格を引き上げた結果MNPの流出が再び増えれば、結局ドコモも実質0円にせざるを得なくなる可能性がある。

パケット料金も同様だ。ドコモをはじめとする各社は、従来型携帯電話では月額390~4410円の2段階定額制だったパケット料金を、スマホへの移行で完全定額制へ移行させ、その定額料金も従来の上限額より引き上げることに成功した。ドコモは、そうして引き上げたパケット収入の一部を還元する形で月3ギガバイトまでの格安パケット料金を新設するが、KDDIやソフトバンクモバイルへのMNPの流出を止められるほどインパクトのある新料金を打ち出せるかどうかは未知数。競争激化を覚悟で思い切った値下げに踏み切れば、パケット料金の増収基調が打ち消され、頭打ちになる可能性も懸念される。

もちろんドコモは、料金施策以外にもさまざまな取り組みを進めている。12年冬にはXiを最大112.5メガビット/秒に高速化するほか、「しゃべってコンシェル」や翻訳電話など音声認識を応用した新サービス、動画や音楽、電子書籍などを統合的に扱うコンテンツ配信サービスの拡充などを13年3月期に予定している。

それでも、技術力だけでKDDIやソフトバンクモバイルの攻勢に対抗するのは困難だ。ドコモ版iPhoneの発売も「様々な条件があって我々の考えているものと合わない。現段階ではなかなか難しい」(NTTドコモの加藤薫次期社長)という状況で、他社の動向をにらみつつ微妙なかじ取りを求められそうだ。

(電子報道部 金子寛人)

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