米、鳥インフル論文の削除勧告を撤回 研究重要と
【ワシントン=共同】米政府の科学諮問委員会は30日、生物テロへの懸念を理由に米英の科学誌に求めていた鳥インフルエンザ研究論文の一部削除勧告を事実上撤回し、公表を認めることを決めた。ただちにテロの危険を招く内容はなく、流行を防ぐ上で研究の重要性が明らかになったとしている。
論文は東京大医科学研究所の河岡義裕教授が英科学誌ネイチャーに、オランダ・エラスムス医療センターの研究者が米科学誌サイエンスにそれぞれ執筆。
世界保健機関(WHO)が全文掲載を求めるなど、インフル対策とテロ防止のどちらを優先すべきかで議論になっていた。
2人は遺伝子操作技術を使い、H5N1型鳥インフルエンザウイルスのどの遺伝子が変異すれば感染しやすくなるかを、哺乳類の実験動物で発見した。
鳥インフルエンザは人に感染することはまれだが、感染した場合の致死率は高い。諮問委は論文が公表されればテロに悪用される恐れがあるとして、ウイルスの作り方などの部分の削除を求めていたが、今回の判断は最新の状況を盛り込んでまとめ直した論文を再検討した結果だとしている。
諮問委の会議では、河岡教授の論文はメンバーの全員一致で、オランダの研究者の論文は賛成多数で公表を認めることが決まった。 諮問委の決定について河岡教授は「われわれの研究成果の、公衆衛生上の有用性を理解したからだ」と話している。