テロに悪用懸念、鳥インフル研究を自主的に停止
内外の研究者、60日間
国内外の39人の科学者は21日までに、「高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1)」のヒトからヒトへの感染などに関する研究を60日間、自主的に停止すると発表した。研究成果が、ヒトに感染しやすいウイルスをつくって広めるバイオテロなどに悪用されるとの懸念が米政府にあるためだ。停止期間中に政府や研究者が悪用を防止しつつ研究を進めるための対策を検討する。
H5N1は家きん類で広がり、ヒトには感染しにくい。しかし特定の遺伝子変異があると感染しやすくなることを示唆する研究成果もある。ヒトに感染すれば致死率が6割に達するといわれる。
東京大学医科学研究所の河岡義裕教授、オランダのエラスムス医療センターのロン・フーシェ教授らが米科学誌サイエンス、英科学誌ネイチャー上で自主停止を発表した。河岡氏らは哺乳動物間で感染しやすい変異株などを研究。論文もまとめたが米政府が一部削除するよう求め、まだ公表されていない。
発表文ではH5N1への感染に関する研究が「ヒトでの流行を防ぐワクチンなどを開発するためにも重要」と指摘。そのうえで悪用への懸念にも理解を示し「今後の研究のあり方を議論する時間が必要」と自主停止を決めた理由を説明した。
技術の進歩で遺伝子改変は容易になっている。研究者らは今後の研究の継続や成果の公表について議論する「国際フォーラム」を計画。世界保健機関(WHO)と連携し、2月末に開く方向で調整しているという。