マイクロソフト、電子書籍新社に3億ドル投資
アマゾン・アップルに対抗
【シリコンバレー=岡田信行】米マイクロソフト(MS)は30日、米書店チェーン最大手バーンズ・アンド・ノーブル(B&N)が新たに設立する子会社に3億ドル(約240億円)を出資し、電子書籍と大学向け教科書分野で提携すると発表した。電子書籍市場ではアマゾン・ドット・コムやアップルとB&Nが激しく競っており、次世代基本ソフト(OS)「ウィンドウズ8」を年内に投入するMSの参戦で競争がさらに激化しそうだ。
両社は新会社の企業価値を17億ドルと算出したうえで、MSが株式の17.6%を出資する。残りの82.4%はB&Nが持つ。
新会社の名称は未定だが、電子書籍端末「Nook(ヌック)」を手掛けるB&Nのデジタル事業と大学向け教科書事業が移行する。
新会社はMSが年内に投入する「ウィンドウズ8」向けのアプリケーションソフトを開発する。「ウィンドウズ8」を搭載したパソコンやタブレット(多機能携帯端末)で「ヌック」の電子書籍を読めるようにする。
米国では電子書籍の売上高が2010年時点で08年の10倍以上に増えており、米大手出版社では出版物の2割以上が電子書籍になっているともいわれる。
アマゾン・ドット・コムが手掛ける電子書籍端末「キンドル」に加え、アップルが多機能携帯端末(タブレット)「iPad(アイパッド)」をヒットさせ、普及が進んでいる。MSは今回の提携で電子書籍市場に足場を築き、「ウィンドウズ8」搭載のタブレットやパソコンでの電子書籍購入を促進する。
MSとB&Nの提携発表を受けて、30日の米株式市場でB&N株は急騰。前週末終値に比べて一時90%以上も値上がりし、7.07ドル(51.68%)高の20.75ドルで通常取引を終えた。MS株は0.11%高で取引を終えた。
また、MSとB&Nは30日、提携に伴って、特許侵害を巡って争ってきた訴訟で和解したと発表した。MSは昨年3月、「ヌック」がMSの特許を侵害しているとして、B&Nと機器メーカーなど3社を米国際貿易委員会(ITC)と米ワシントン州西部地区連邦地裁に提訴していた。