所得・相続税も最高税率上げ 消費増税法案
富裕層課税を強化 消費税「逆進性」に配慮
政府が30日に国会提出した消費増税関連法案は、消費税率の引き上げに加え、所得税と相続税の最高税率を引き上げることで高所得層や富裕層への課税を強化する内容だ。消費増税で低所得層の負担感が強まる「逆進性」に配慮し、税制による所得の再分配機能を高める狙い。ただ、富裕層への課税強化は消費の落ち込みにつながり、経済の活力を奪うとの指摘もある。
所得税は45%の最高税率区分を新設し、課税所得5000万円(給与収入5536万円)超に適用する。これまでの最高税率は40%で、1800万円超が対象だった。2015年分の所得から適用される。最高税率の引き上げは07年以来で8年ぶりとなる。
相続税も最高税率を55%に上げ、6億円超の課税対象資産に適用する。現在の最高税率は3億円超の部分にかかる50%。2億~6億円の階層の税率も見直し、現状より高い税率を課す。贈与税は3000万円以下の贈与にかかる税率を軽くし、高齢者から現役世代への資産移転を促す。
所得税や相続税などの改正のポイントは不公平感の軽減だ。消費税には、税率が上がると低所得層ほど負担感が重くなる「逆進性」があるとされる。金融資産の多い高齢者に比べ、若者は少子高齢化で社会保障負担が増える。消費増税への理解を得るため「持てる者」から「持たざる者」へと資金を移す税制の所得再分配の強化を進める。
ただ踏み込み不足な点も多い。働く女性に不公平との批判がある配偶者控除や、優遇見直し議論もある公的年金等控除など、所得税の控除見直しは検討事項として先送りした。先送りした課題は30を超す。政府は当初、所得税の最高税率の対象を所得3000万円超とする方針だったが、経済への影響を限定したい民主党側が5000万円超とした。
企業活動の国際化が進み、各国が法人税率を引き下げて誘致を競う。法人税の課税強化は日本の産業空洞化を加速させかねず、政府にとって選択肢になりにくい。各国の所得税の最高税率は米国35%、フランス41%、ドイツ45%、英国50%など。45%にすれば、日本は欧州並みになる。