総人口、過去最大の25万9千人減 1億2779万人に
総務省推計
総務省は17日、2011年10月1日時点の日本の推計人口を発表した。定住外国人を含む総人口は1億2779万9千人で、1年間で25万9千人減った。減少数は1950年以降の統計で最大。65歳以上の老年人口割合は過去最高の23.3%に達した。東日本大震災や福島第1原子力発電所事故が響き、外国人の国外転出も過去最高を記録した。人口の減少や流出を食い止めるため、政府は一層の少子化対策や経済成長戦略が急務となる。
人口の減少を放置すれば国力の低下を招きかねない。個人消費や設備投資などの需要が減るだけでなく、労働投入量という供給の面からも経済成長を制約するためだ。
日本は05年に戦後初めて人口が減少。少子高齢化で07年以降は出生児より死亡者が多い自然減が定着し、本格的な「人口減少社会」を迎えた。
今回の人口の急激な落ち込みは、出生率の低下と高齢化というこれまでの傾向に加え、震災と原発事故による日本からの人口流出が重なったことが主因だ。総務省統計局は「外国人の入国者数が昨年3月の東日本大震災の直後に大幅に減った」と説明する。
都道府県別に見ても、震災や原発事故の影響は色濃い。福島県の人口減少率は1.93%と都道府県別の統計で過去最大の落ち込み幅だ。人口の減少率は岩手県が2位、宮城県が4位と「被災3県」が上位に並ぶ。
震災や原発事故による人口減は、被災地の復興や放射能の影響が少なくなることで徐々に回復に転じる期待もある。問題は構造的な少子高齢化や投資先、働き先としての日本の魅力の低下だ。
1989年以降の「平成生まれ」は今回初めて総人口の20.5%と2割を超えたものの、0~14歳の年少人口が65歳以上の老年人口を上回るのは沖縄県だけ。47都道府県の過半数にあたる24道県で75歳以上のいわゆる後期高齢者の人口が年少人口を上回る。
老年人口の多さは日本人の寿命の長さの表れだ。半面、長寿を支えてきた年金、医療、介護といった社会保障制度を維持している現役世代の負担は重くなる。社会保障の財源として消費税率の引き上げが政策課題として浮上しているのは、負担と給付のバランスを保つのが年々、難しくなっていることが背景だ。
結婚、出産、育児などをきっかけに就労率が低下する女性に対し、再就職や育児の支援策を強化することも課題となる。技能の高い外国人労働者をどのように受け入れていくかも議論を深める必要がある。
働き手が減る中で技術革新を促し、生産性を高めて経済成長を目指す道もある。野田内閣は13日、デフレ脱却に向けた閣僚会議を発足させた。雇用分野の規制改革など財政出動に頼らない内需拡大策を6月にまとめる。
競争力を高めれば海外への人材流出も避けられる。大学の秋入学検討や税制なども含め、政府は幅広い成長戦略を早急に打ち出し、国としての日本の魅力を高める必要性に迫られている。