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アップル、行く末は「ジョブズ後」か「ジョブズ前」か?

17年ぶり復配 カギ握るのは"カリスマ"支えた幹部社員

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米アップルが17年ぶりに配当を実施することを発表した。「金もうけよりも世界を変えること」にこだわった共同創業者、故スティーブ・ジョブズ氏が生きていたら、おそらく許容しなかったであろう方針転換。その行く先は「ジョブズ後」の新たな黄金期なのか、それとも経営破綻寸前までいった「ジョブズ前」か――。

「ティム・クック現最高経営責任者(CEO)が独自色を出し始めた」。

株式市場関係者やメディア、日ごろは辛口のアップルウオッチャーも、配当実施や自社株買いには一様に異論をはさんでいない。「貯蓄より消費」のお国柄が背景にあるかもしれない。あるいは、皆さん、アップルの株主なのかもしれない。

アップルが発表した施策はこうだ。2012年7~9月期から1株あたり2.65ドルを四半期配当として支払い、12年10月~13年9月期から3年間、100億ドルの買い入れ枠を設定して自社株買いを実施する。この株主還元に450億ドルをつぎ込む――。ジョブズ時代なら考えられないことだ。

株主との対話を嫌ったジョブズ前CEOに代わり、クック氏はジョブズ氏の生前から機関投資家や証券アナリストなどと接し、「株主の声」に触れる機会が多かった。

配当や自社株買いは利益成長が鈍った企業が株価対策として実施することが多い。ただ、アップルはその必要が無いくらい株価が上がり続けている。

株主がアップルに還元を求めるのは株価対策ではない。「巨額買収くらいしか使途がないほどに積み上がった余資を株主に還元せよ」という求めであり、教科書的には"正しいお金の使い方"だろう。

しかし、なぜ、ここまで積み上げたのか、誰が積み上げたのかを考えると、違う風景がみえてくる。

過去の経営危機の悪夢を忘れず、パラノイア(偏執症)のように現金をため込み、8兆円以上にまで積み上げたのはジョブズ氏だ。ジョブズ氏は生前、クパティーノ市の本社で開く株主総会で、株主還元策を追及されても、「株主に返しても、アップルの企業価値はあがらない」と明確に拒否してきた。

アップルが現金を持てば、それは次の製品やサービスの開発に回り、収益拡大につながって株価が上がり、株主の利益になる。株主に配当で払ってしまえば、一回きりで終わって何も生まない――。ジョブズ氏はそう確信していた。

今回、クック氏は「研究開発や企業買収、店舗展開やインフラ整備などに積極的に投資してきたが、それでも十分に現金がある」と指摘。配当や自社株買いに回す現金があくまでも余資であることを強調した。また、「イノベーションが最優先であることは変わりない」と念押しもした。

しかも、配当原資は米国内で蓄えた資金だ。アップルがため込んだ資金の大半は国外にあり、「還元の原資は一部の資金のみ」と印象づけるのにも余念がない。証券アナリストも軒並み「アップルが配当や自社株買いを実施しても、収益拡大の勢いは変わらないだろう」と予測する。

それも事実だろう。しかし、一度空いた風穴を防ぐのは容易ではない。一度変わった風向きを変えるのは難しい。

声明文をよく読むと、自社株買いの主目的は「従業員への株式付与などに伴う希薄化の影響を緩和するため」とある。電話会見では、ピーター・オッペンハイマー最高財務責任者(CFO)が「長期保有株主に報いる」「投資対象としての魅力向上」など他の目的も並べ立てたが、今回の"株主還元"策は、従業員株主を主眼においた施策と読めないこともない。

株価が安い時代からアップル株を保有してきた株主にとっては株価上昇だけでも大きな利益だ。しかし、今後新たに株式や購入権を付与される役員や従業員にとっては保有メリットは未知数。売却可能な時期が来れば売る可能性が高い。

アップルはジョブズ氏死去後、クック氏を筆頭に主要な幹部、従業員に特殊な株式を付与してきた。アップルに留まることを条件に一定期間がたった後に普通株式に転換する権利を得る仕組み。つまり、辞めてほしくない幹部や従業員を引き留める手段として自社株が使われている。

もともと、アップルには「金もうけするよりも一緒に世界を変えないか」とジョブス氏に誘われて、あるいは、希代のカリスマである彼にあこがれて入社した幹部が少なくない。ジョブズ氏亡きいま、彼らをアップルに留め、従来以上に創造的な仕事をしてもらうには、皮肉にも、ジョブズ氏がためこんだ現金が最も有効な武器となる。

折しも、アップルが本社を置く米シリコンバレーには、有力IT(情報技術)企業がひしめく。グーグルや新規株式公開(IPO)を控えたフェイスブックなどは人材採用に積極的で、ITエンジニア不足のために激しい引き抜き合戦を展開している。アップルといえども社員を厚遇しなければ、優秀な人材を他社にとられてしまう。

今回の「手元資金還元策」をもって、アップルが従来の路線を改め、株主重視に舵(かじ)を切ったとみるのは早計だ。百歩譲って株主を重視する姿勢を打ち出したとしても、その視線の向こうにあるのは機関投資家やウォール街ではなく、アップルがこれから株式を付与する社員株主である可能性が高い。

「連中は金もうけばかり考えて、アップルをダメにした」。ジョブズ氏はCEOに復帰する前、同社の経営不振を招いた経営陣を痛烈に批判してこういった。「イノベーションなくして企業価値の向上無し」というジョブズ氏の確信は、配当をしようが、しまいが、真実だろう。

株主の方ばかりを向いて、短期的な利益を追求したら、イノベーションは難しい――。ジョブズ氏がこの15年で実践した路線を大きく転換する形となった今回の方針発表。株主還元を厚くすることで、潜在的な株主となる有能な社員を引き留め、さらなるイノベーションにつなげられるだろうか。

カギを握るのはジョブズ軍団の中核をなしてきた幹部社員たち。彼らがアップルの普通株式を手にしてもなお、社内に留まるか。社内に留まって、秀逸な製品・サービスを生み出し続けることができるかどうかにかかっている。

ジョブズ氏が蓄えた財を、彼が禁じ手としていたやり方に使わざるを得ない矛盾と皮肉。クック体制は「ジョブズ後」のアップル黄金期を築けるのか、それとも「ジョブズ前」に戻るのか。賽(さい)は投げられた。

(シリコンバレー=岡田信行)

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