アメリカン航空 争奪戦へ USエアやデルタが買収検討
【ニューヨーク=杉本貴司】米航空大手USエアウェイズは25日、傘下に業界世界3位の米アメリカン航空を抱え、昨年11月に経営破綻したAMRの買収に関心を持っていることを明らかにした。同2位のデルタ航空も検討しているもようで、アメリカンの争奪戦に発展する可能性が出てきた。AMRが台風の目になる形で巨大な航空連合が誕生しそうだ。
USエアのパーカー最高経営責任者(CEO)は25日、決算説明の電話会見で、英バークレイズ・キャピタルなど証券3社をアドバイザーとして「AMRの破綻に関する我々の選択肢を探っている」と語った。
米報道によると、デルタもAMR買収を検討。米TPGキャピタルなど投資ファンドもAMRに関心を示している。
AMRは米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)を申請した時点で41億ドル(約3200億円)の手元資金があった。当面は自力で運航を継続できるため、再編の実現には一定の時間がかかる見通し。ただ、自社の輸送網やマイレージサービスなどを共同運営する航空連合の拡大を目指す米同業大手にとって、アメリカンは魅力的だ。
デルタが買収すれば、旅客輸送距離で米ユナイテッド・コンチネンタル・ホールディングス(UAL)を抜き、世界首位となる。米航空各社は2001年の同時テロを境に業績が悪化し、大型のM&A(合併・買収)が相次いだ。08年にデルタがノースウエスト航空を買収し、10年にはユナイテッド航空とコンチネンタル航空が合併した。
各社の背中を押すのは、格安航空会社(LCC)が火を付けた世界規模での空の価格競争だ。デルタなど既存の航空大手は現在、便数削減で搭乗率を高めて価格を維持するが、中長期的にはコスト競争が避けられない。
法的整理を経て人件費を圧縮したアメリカンを買収すれば、同社の路線網が低い運営コストで手に入る。UALへの対抗軸をつくる好機となる。
アメリカンの行方は、世界の航空業界の地図も大きく塗り替える可能性がある。アメリカンは航空連合「ワンワールド」の一員で、デルタは「スカイチーム」、USエアは「スターアライアンス」にそれぞれ加盟する。
特に影響が大きいのはアメリカンと提携し、ワンワールドに加盟する日本航空だ。日航はアメリカンの破綻後も共同運航便について「通常通り」としてきた。争奪戦で航空連合の組み替えが起これば、提携戦略の練り直しが求められる。