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グーグルの情報収集は是か非か プライバシー問題続発の深層

ITジャーナリスト 小池良次

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米グーグルが再びプライバシーを巡る問題を引き起こした。発端はスタンフォード大学の大学院生が、「グーグルが米アップルのブラウザー『Safari』のプライバシー設定を回避して情報を収集している」とブログで指摘したこと。2010年に連邦政府機関から捜査を受けていたグーグルの度重なるプライバシー・トラブルに、市民団体や政府機関、連邦議会が神経をとがらせている。問題の背景には、ユーザーから収集した情報を活用してサービスの付加価値を高めようとするネット事業者の思惑がある。

アップルのブラウザーから情報を収集

スタンフォード大学セキュリティー研究所のジョナサン・メイヤー氏は、2月17日にブログで同問題を指摘した。これを受け米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が即日、詳細なニュースを掲載。以後、大手メディアがグーグルのプライバシー問題で取材合戦を繰り広げている。

Safariはパソコンだけでなく、同社のスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)「iPhone」やタブレットの「iPad」などのモバイル製品に搭載されている。

ブラウザーには、「Cookie(クッキー)」と呼ぶ、ユーザーを識別するための機能がある。Webサーバーはブラウザーから送られるクッキーを基にユーザーを識別、管理する。ユーザーがユーザー名やパスワードを繰り返し入力する手間が省けるといった利点があるため、広く利用されている。

クッキーを使うと、閲覧情報のほかブラウザーや端末種別などを把握できる。閲覧時にクッキーの利用をユーザーが認めた場合は良いが、第三者が勝手にクッキーを使ってこれらの情報を収集することは、プライバシーの侵害と見なされる。

Safariは出荷時に、プライバシー保護の観点から第三者クッキーを受け付けないように設定されている。アップルは「Safariはプライバシー保護に優れている」と説明していた。

しかしメイヤー氏はブログでSafariのクッキー機能に3つの脆弱性があると指摘。この手法を利用してグーグルとバイブラント・メディア(Vibrant Media)の2社が、「意図的に」Safariのプライバシー設定を回避して、情報を収集していると指摘した。

グーグルに厳しい視線が注がれる理由は

WSJの記事を受け、連邦議会のエドワード・マーキー下院議員とジョセフ・バートン下院議員、クリフ・スターンズ下院議員が連名で、事態の解明を求める書簡を米連邦取引委員会(FTC)に送付した。

 マーキー議員とバートン議員は、「プライシー問題に関する民主・共和党の共同委員会」の共同議長で、以前からインターネットにおけるプライバシー保護を協議してきた。両議長がグーグルに対して厳しい態度を示すのには理由がある。

日本の公正取引委員会にあたるFTCは、10年2月にグーグルが発表した「Google Buzz」で、「個人情報が無断で公表された」というユーザーのクレームを受けて捜査をしている。このときFTCは、包括的プライバシープログラムの実施と、向こう20年間にわたる第三者機関による定期査察(2年に1度)の受け入れなどを義務付けて、グーグルと和解した。グーグルは、11年12月にBuzzのサービスを取りやめた。

こうした経緯から、両共同議長は今年1月末にグーグルが発表したプライバシー・ポリシーの一本化についても懸念を表明し、問題がないかを2月21日までに回答するようFTCに諮問していた。その矢先に、グーグルが意図的にユーザーのプライバシーにかかわる情報を収集していたことが明らかになったため、即日FTCに調査を求めた。

FTCは正式なコメントを発表していないが、議会の要請に応じて調査を開始することになるだろう。一部メディアは、グーグルが和解契約を破った場合、1日当たり1万6000ドルの罰金を科されると報道した。今回の情報収集が契約違反と見なされると、高額な罰金を要求される可能性がある。

この問題はほかの事業者にも波及している。WSJは、グーグルだけでなくバイブラント・メディア、メディア・イノベーション・グループ、ポイントロールといった会社も、Safariの脆弱性を利用して、ユーザーの情報を収集していたと述べている。

グーグルは米国時間の22日現在、この問題について正式なコメントを公表してはいない。各種メディアに応じた取材では「グーグルのサービスを便利に使うためにSafariのクッキー機能を利用したのであり、問題はない」との態度を表明している。ただしWSJからの取材後、グーグルはSafariを使った情報収集をやめている。

さらに、米マイクロソフトも同社のブラウザー「インターネット・エクスプローラー(IE)」のプライバシー保護機能をグーグルが回避していたと発表した。

米国で多発するプライバシー問題

米国では近年、インターネットのプライバシー問題が複雑化しており、FTCは多忙を極めている。

例えばSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のフェイスブックは、プライバシー条項を変更し、第三者に無断で個人情報を提供できるようにしたことで、FTCから09年12月に捜査を受けた。この件でフェイスブックはFTCがグーグルに提示したのとほぼ同じ条件で11年11月に和解している。

11年5月には、ブロードバンドを使ったデータ保管サービス「Dropbox」を運営するドロップボックスへのクレームがFTCに送られた。同社が保管するユーザーデータは「AES-256方式で暗号化されており、ユーザーのパスワードなしでは(誰も)アクセスできない」としていたが、実際には捜査当局の要請に応じてデータ開示ができる仕様に変更されていた。開示条件の変更に伴ってプライバシー規約も変更されており、ドロップボックスに悪意はないとされていたが、ユーザーは不十分な周知活動と過剰な宣伝表現に対する是正をFTCに求めた。

 11年12月には、モバイル用ネットワーク監視ソフトのCarrier IQ(CIQ)が、ユーザーのスマホから個人情報を収集しているという騒動が起こった。これはセキュリティー研究家のトレバー・エッカート氏がキーパッドの操作からSMS(ショート・メッセージング・サービス)のメッセージまで細部にわたる情報をCIQが集めて携帯事業者に送信していると批判したため。実際には出荷時のバグ(ソフトウエアの不具合)が主な原因だったが、同ソフトを提供したCIQはFTCで状況解説や改善策の説明に追われた。

最近では12年2月初めに、上限150名の限定型ソーシャル・サービスとして注目を集めた「Path」が、iPhone内の連絡先データを無断で自社サーバーにアップロードしていることが判明し批判を浴びた。シンガポールの開発者がブログで発表し、運営会社のパスもこれを認めている。

SNSではユーザー情報を相互に照合して、知人や友人を紹介するレファレンス・サービスが一般化している。これらはユーザーがホームページに入力した個人情報を相互に照会するのが基本で、パスのように携帯電話に蓄積された情報を勝手に収集するのは行き過ぎだ。アップルもアプリケーション開発者がユーザーの許可なしに個人情報を送信することは禁止している。

見つからない事業者とユーザーの合意点

ブロードバンドが普及しネットサービスに人々が依存するなか、サービスの差異化や付加価値向上のため、アプリケーション開発者やサービス事業者は個人情報の収集に力を注いでいる。個人情報に依存する傾向は、グーグルに限らず個人向けネットサービスほぼすべてで強まっている。

個人情報の利用そのものが悪いわけではない。FTCに持ち込まれるのは「ユーザーに無断で情報を収集している」事例ばかりだ。グーグルやドロップボックスなどの例では、いずれもユーザーに無断あるいはほとんど告知をせずに、ポリシールールを変更し情報収集していたことが問題となっている。

パスのようにアップルの規約を破る行為は別としても、個人情報を専門に取り扱うSNSでもこのルールは変わらない。フェイスブックは07年11月にGoogle Buzzに似た"Beacon"と呼ぶサービスを発表したが、ユーザーからプライバシー問題でクレームを受けて中止に追い込まれた。同サービスはユーザーが買った商品やサービスの情報を知人や友人に通知するという広告機能だった。

プライバシー保護の問題ではユーザーとサービス事業者が納得できる合意点はまだ見つかっていない。多くのユーザーは、開発者やサービス・プロバイダーが示す長文の法律文章を示されるだけでうんざりする。しかも規約は一方的で個別の選択肢はない。こうしたなかでサービス提供者が、ユーザーから承認を取ったうえで付加価値の高いサービスを提供することは難しい。

今後もサービス事業者が高い付加価値を求める限り、プライバシー情報に依存していかなければならない。プライバシーを巡るトラブルは今後も繰り返されるだろう。

小池良次(Koike Ryoji)
 米国のインターネット、通信業界を専門とするジャーナリストおよびリサーチャー。88年に渡米、93年からフリーランスジャーナリストとして活動している。サンフランシスコ郊外在住。主な著書に「クラウド」(インプレスR&D)など。

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