授産施設の賃金増を 都内自治体、障害者自立後押し
都内の自治体や企業などが障害者が働く授産施設での製品開発や販売で協力する動きが広がっている。東京都大田区はパンの製造販売会社や専門学校と連携して製品開発に乗り出し、墨田区は製品販売で協力する。授産施設で働く従業員の賃金は平均で月1万5000円程度にとどまっている。製品の価値を高めて売り上げを増やし賃金を引き上げることで従業員の自立を支援する。
大田区は障害者がパンを製造販売する「スワンベーカリー」を運営するスワン(東京・中央)と提携。区内の授産施設6カ所の商品開発の支援に乗り出した。
スワンが菓子の表面に絵柄を焼き付ける技術などのノウハウを提供し、各施設で製造した商品を詰め合わせにして販売する。スワンの海津歩社長は「『障害者の製品』というアピールがなくても売れるような商品にする」と話す。
詰め合わせ商品の箱は日本工学院専門学校(東京・大田)の学生らがデザインした。大田区は8月上旬にJR蒲田駅(同)の駅ビルで120セットを試験販売し、今後は区内の調理師専門学校にもレシピ作成の協力を得る予定。10月の羽田空港の国際化後は商品を空港でも販売する。
大田区は「民間の知恵を生かして授産施設の商品を区のブランド品に育てたい」(産業振興課)と期待している。
墨田区は授産施設の商品を販売するための移動式ワゴン店を8月に導入した。週2日程度、区の施設やイベント会場などに出店し、菓子や文房具、アクセサリーなどの製品を販売する。授産施設の従業員にも販売を経験してもらう。
雑貨企画販売のイデアインターナショナル(同・港、橋本雅治社長)は授産施設2カ所と連携する。同社がデザイン性の高い布の端切れを買い付けて、授産施設の従業員に縫製を委託しトートバッグやバッジなどを製造する。
従来はイベントでの販売が主だったが、来春から有楽町マルイ(同・千代田)の直営店などで本格的に売り出す。「授産施設の従業員がそれぞれの感性で布を組み合わせておりデザインは高い」(同社コミュニケーション部)
都の調査によると、都内の授産施設で働く障害者の2007年度の賃金は月額約1万5000円で自立を妨げる一因になっている。都は11年度までに賃金を06年度比で倍増させる計画を打ち出しており、10年度は授産施設に経営コンサルタントを派遣し、商品開発や市場開拓などを助言する事業を始めている。
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