ノーベル平和賞に中国の反体制作家、劉暁波氏
服役中の受賞は戦後初
【ロンドン=岐部秀光】ノルウェーのノーベル賞委員会は8日、2010年のノーベル平和賞を中国で服役中の反体制作家、劉暁波氏に授与すると発表した。急速に経済発展を遂げる中国に対し、人権状況の改善や民主化を進めるよう圧力をかける狙いがあるとみられる。服役中の人物に同賞が贈られるのは戦後初めてで中国政府の反発は必至だ。中国と欧州の対立の火だねとなる可能性もある。
劉氏は1989年の天安門事件の際のリーダーで、中国共産党による一党独裁体制の廃止を求める「08憲章」の起草で中心的な役割を果たしたことから懲役11年の実刑判決を受けて服役中。
ノルウェーのノーベル賞委員会は先月、中国政府が「中国とノルウェーの関係が悪化しかねない」として劉氏に賞を与えないよう圧力を加えていたと明らかにした。
中国は急速な経済発展で存在感を増したが、欧米による中国の為替政策に不満が高まったうえ、日本の尖閣諸島を巡る問題でも中国の領土的野心が各国で批判された。中国が資源確保の観点からアフリカなどで非民主的な体制との経済協力を強めていることにも欧米の不満が強まっている。
ノーベル平和賞は昨年、就任間もない米国のオバマ大統領に贈られた。賞が政治色を強めていることも波紋を広げそうだ。
授賞式は12月にノルウェーのオスロで開かれるが、本人の出席は困難とみられる。賞金は1000万スウェーデン・クローナ(1億2500万円)。