景気「足踏み」に下方修正 10月月例報告
輸出・生産弱含み
海江田万里経済財政相は19日、10月の月例経済報告を関係閣僚会議に提出した。景気の基調判断を「持ち直してきている」から「足踏み状態となっている」に弱め、1年8カ月ぶりに下方修正した。急速な円高や世界経済の減速、国内の政策効果の息切れが重なり、輸出や生産が鈍化しているのが主因。民間エコノミストの間では「来春まで足踏みが続く」との見方が大勢だ。
内閣府は2009年6月から、「持ち直し」との基調判断を維持してきた。それより弱い「足踏み」の表現を使うのは、リーマン・ショック直前の08年7月以来。「当面は弱めの動きも見込まれるものの、景気が持ち直していくことが期待される」との認識も示した。
個別項目では輸出の判断を2カ月連続で下方修正。アジア向け輸出の落ち込みなどを反映し、「増勢が鈍化している」から「弱含んでいる」に変えた。生産の判断は2カ月ぶりに下方修正し、エコカー補助金終了後の反動減なども踏まえて「緩やかに持ち直している」から「弱含んでいる」に変更した。
海江田経財相は19日の記者会見で、景気の現状について「横ばい圏内で推移している。当面厳しいのは10~12月期だ」と指摘。「円高・株安などの影響で、さらに下振れするリスクが存在する」との懸念を表明した。
内閣府の外郭団体である経済企画協会の集計によると、民間エコノミストが予測する10~12月期の実質経済成長率(前期比年率)は平均でマイナス0.21%。記録的な猛暑やエコカー補助金終了前の駆け込み需要などが追い風となった7~9月期の2.11%から大きく落ち込む。
11年1~3月期は1.16%、11年4~6月期は1.32%で、景気の失速は避けられるとの見方が多い。ただ米中経済の減速や円高による企業・家計心理の悪化などもあって、景気の足取りが重くならざるを得ない。
大和総研の熊谷亮丸氏は「中国経済の減速が止まるかどうかがカギになる。日本経済の持ち直しは来年半ば以降だ」と指摘。野村証券の木内登英氏も「円高の影響が薄まり、米中の在庫調整が終わって生産が上向く来年4~6月期までは、景気回復の動きが一時的に停滞する『踊り場』が続く」とみている。
一方で「夏以降はアジアの新興国に持ち直しの動きがある。早ければ年明けにも踊り場を脱する」(BNPパリバ証券の河野龍太郎氏)との声も出ている。