トランプ大統領、最側近バノン氏解任 政権屋台骨揺らぐ
【ワシントン=川合智之】米ホワイトハウスは18日、トランプ米大統領の最側近であるバノン首席戦略官・上級顧問が同日付で退任すると発表した。大統領による事実上の解任となる。バノン氏は排外的な政策を主張し、トランプ氏を当選に導いた立役者だったが、トランプ氏の家族や別の側近との意見対立で解任を求める声が強まっていた。
トランプ政権の混乱収拾を狙ったバノン氏の解任で、政権の方向性がどう変化するかが今後の焦点だ。相次ぐ政権幹部の退任の動きが、大統領最側近だったバノン氏にまで及び、政権の屋台骨は揺らいでいる。
ホワイトハウスによると、バノン氏とケリー首席補佐官が同日の退任で合意した。米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)によると、バノン氏は7日に辞表をトランプ氏に出したが、12日に米南部バージニア州で起きた白人至上主義団体と反対派の衝突を受けて発表が遅れていた。
バノン氏は移民排斥や保護貿易など、トランプ氏当選の原動力となった「米国第一主義」を推進した。政権発足後はプリーバス氏と並んでホワイトハウスの筆頭幹部に就き、政権の「黒幕」とも呼ばれた。しかし、イスラム圏からの入国禁止令が連邦裁判所から差し止められるなど、政策の多くが頓挫していた。
バノン氏の排外的な主張は、政権内の穏健派とも相いれなかった。トランプ氏の娘婿、クシュナー上級顧問はバノン氏解任を進言。バノン氏は16日の米メディアのインタビューで「毎日が戦いだ」と述べ、米金融大手ゴールドマン・サックス出身のコーン国家経済会議(NEC)委員長らとの確執を公言していた。
同じインタビューでバノン氏は「北朝鮮問題は余興だ。軍事的解決はない」などとトランプ政権と異なる見解を主張し、ティラーソン国務長官が記者会見で慌てて打ち消す一幕もあった。米CNNテレビによると、バノン氏のインタビューでの発言がトランプ氏の怒りを買ったという。
バノン氏は政権入りする前、白人至上主義などを唱える「オルトライト(ネット右翼)」のニュースサイト「ブライトバート・ニュース」を運営。同サイトは18日、バノン氏が同サイト会長に復帰したと発表した。
トランプ政権ではフリン前大統領補佐官(国家安全保障担当)やコミー前米連邦捜査局(FBI)長官、プリーバス前首席補佐官、スパイサー前大統領報道官ら幹部が相次いで退任。7月末にホワイトハウスを統括する首席補佐官に就いたケリー氏が立て直しを図っているが、動揺は収まっていない。