特設注意市場銘柄とは 3年で改善なければ上場廃止
東京証券取引所は20日、オリンパスの株式を特設注意市場銘柄に指定すると発表した。損失隠し問題が上場廃止にするほど悪質ではない、との判断から上場維持を決めたが、投資家には企業統治体制に問題があることを周知させる。Q&A形式で特設注意市場銘柄についてまとめた。
Q:特設注意市場銘柄とは何か。
A:企業統治に問題があることを示すもので、指定を受けた企業は3年で改善を認められなければ上場廃止になる。内部管理について新規上場時と同様に審査を受ける。例えば企業のガバナンス体制や内部管理の有効性のほか、財務関連部署で不正が起きないようにけん制するしくみをチェックする。
Q:指定を受けた企業は具体的に何をするのか。
A:指定から1年が経過した段階で、東証に「内部管理体制確認書」を出す必要がある。改善が認められると指定は解かれ、通常の銘柄に復帰するが、問題があると見なされた場合はさらに1年が経過するたびに同確認書を出す。指定から3年でも問題を解消できていないと東証が判断すれば、整理銘柄指定を経て上場廃止になる。
Q:いつできた措置なのか。
A:2007年11月に導入した。東証はライブドア事件以降、毎年のように「上場制度総合整備プログラム」を策定し、投資家や企業の信頼性が高い証券取引所の整備を目指してきた。特設注意市場銘柄の措置は「上場廃止か、上場維持か」といった二極化の結論ではなく、投資家の利益を守りながら企業のガバナンス体制を支援できるあり方を模索する中で生まれた。
Q:これまではどんな企業が特設注意市場銘柄になったのか。
A:第1号は2008年2月に指定を受けたIHI。プラント事業の巨額損失を出したことが内部管理体制に問題あり、と見なされた。その後09年5月に解除となっている。オリンパスは通算11社目の指定で、12年ではマザーズ上場の京王ズホールディングスに続いて2例目。これまで指定を受けた5社は親会社による完全子会社化を含め上場廃止になっている。
Q:問題を起こした企業に対する東証の制裁措置として特設注意市場銘柄はどんな位置づけなのか。
A:東証による問題企業への対処は「制裁措置」と「改善を促す措置」の2つに大別できる。特設注意市場銘柄は改善を促す措置の中で最も重い。内部管理体制全体に問題がある、との認識のもと、東証が新規上場時並みに審査を受けさせることで出直しを促す。次いで重いのは改善報告書の徴収。最近では前会長の巨額資金流出が起きた大王製紙が同報告書の徴収を求められた。
一方、制裁措置で一番重いのは上場廃止で、その次が一律1000万円の上場違約金の支払い命令。次いで企業の問題行動の内容を広く知らせる公表措置となる。
Q:オリンパスの損失隠しは長年に及ぶため、悪質と言えそうだが。
A:東証はオリンパス株を虚偽記載が重大な影響を及ぼす恐れがある、との理由で監理銘柄(審査中)に指定し、上場廃止の判断を含め、上場部とは役割を分けた自主規制法人が講ずるべき措置を検討した。損失隠しの原因や経緯を調べ、「問題はあるが上場廃止にするほど悪質ではない」と判断した結果、クロとはしないがシロでもないグレーゾーンに落とし込んだと言えそうだ。〔日経QUICKニュース〕