気づけば30代 人に好きと言えません
脚本家、中園ミホさん
子どものころから、人に好きだと伝えることができません。3歳の甥っ子が「大好き」と言ってくれたときも、同じ言葉を返すことができませんでした。結婚をしていない私にとって、かわいい甥っ子は奇跡のような存在。とても愛しているのに、です。(岡山県・30代・女性)
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あなたはとても優しい人ですね。甥っ子を奇跡のような存在、と言えるのは、愛情や命のありがたさをわかっているからでしょう。
そして、かなり不器用な方なのではと推察します。人を好きになっても思いを伝えられないまま、気づくと30代になっていた……。私、好きです。あなたのようなタイプ。あたり構わず好きだと言える人より、ずっと素敵です。
ラブストーリーを書く脚本家の立場で言えば、こういうタイプはヒロインにうってつけです。あなたを主人公にして、ラブストーリーをつくるなら、大好きな男性に告白するまでの話を書きますね。
不器用だけれど、その不器用さがたまらなく素敵なヒロイン。男性に万感の思いで告白するシーンなど、脚本家に想像力をかき立てさせる魅力があります。
甥っ子が大好きと言ってくれたのに、何も言えなかったことをずっと悔やんでいるこの優しさ。心の細胞がとてもきれいですね。
こういう人に好きだと言われたら、言われた方も真剣に受け止めるはず。いろんな人に「大好き」と言い回っている私のような女よりもね。
ただ、30代ですよね。幸せになるのを遠回りしてほしくない年齢です。そろそろ焦った方がいいかも。これまでの人生で言ったことがない「好きだ」という言葉を、そろそろ誰かに言ってほしい。
失敗してもいいんですよ、本当は。告白してうまくいかなかったら「だめだったか、ちっ。次いこ、次」でね。もっとも、そういうタイプじゃないから素敵なんですけど。あなたの「好き」は人の何百倍も価値があると思います。
そこで提案です。3歳の甥っ子を練習台にして、告白することに慣れてみましょう。まず練習です。積み重ねていけば、きっと実を結びます。
あなたのような純粋な人から好きだと言われて、イヤな人はいないと思う。自分の不器用なところも好きになって、自信を持ってほしい。
そしてうまくいった暁には、ぜひまた投書してください。素敵なラブストーリーが書けそうな予感がします。
[NIKKEIプラス1 2017年6月3日付]
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