講談社、ミリオンセラー無き増益 デジタルで稼ぐ
講談社が21日に発表した2016年11月期単独決算は3年ぶりの増収増益となった。売上高は前の期比微増の1172億円、純利益が86.7%増の27億円だった。書籍で販売部数が100万部を超える「ミリオンセラー」が生まれなかった中での好決算。原動力となったのは新たな収益の柱と位置づけてきたデジタル事業と版権事業だ。
「長年取り組んできたデジタル戦略や版権ビジネスが身を結んだ」と21日に開かれた決算発表会で講談社の野間省伸社長は前期決算を振り返る。
野間社長の言葉を裏付けるように、電子書籍を中心とするデジタル分野の売上高は前の期比44.5%増の175億円に伸びた。コミックを含む雑誌が7.4%減の627億円、書籍が1.1%減の173億円にとどまったのとは対照的だ。
紙の不振をデジタルで補うという構図が鮮明になった講談社。だが、今回の決算で注目すべき点がもう一つある。海外版権ビジネスだ。売上高の絶対額こそ36億円と小さいが、前の期からの伸び率は16%に達した。
講談社は14年に米国に電子書籍の配信子会社「講談社アドバンストメディア」を設立した。それまでは現地の出版社を通じて電子書籍を配信していたが、今は独自の販売策をとれるようになっている。「進撃の巨人」など日本でヒットした作品の英語版の配信に加え、障害といじめの問題を扱った「聲(こえ)の形」など社会性の高い作品も提供し、読者の層を広げている。
中国では、ファッション誌「ViVi」の版権を現地企業に供与している。現地企業は雑誌を発行するだけでなく、雑誌のブランドを冠した女性用衣料を企画・販売している。日本のファッション誌はアジアの若者の間で人気が高い。その人気を生かしてロイヤルティー収入を得ている。
出版不況と言われるようになって久しい。出版社にとって「デジタル」と「海外」の比重が一段と高くなっている。(荒尾智洋)