規制緩和で旅館を成長産業に
厚生労働省が旅館業法を改正し旅館やホテルに関する規制を緩和する準備を進めている。同法は戦後間もない1948年に制定された。不要となった規制の撤廃で経営者の創意工夫を引き出し、成長産業に育てたい。
現在、宿泊施設の構造や設備は細かく決められている。ホテルは最低10室以上、旅館は5室以上の客室を備えなければならない。玄関には帳場の設置が義務づけられ、サイズや作り方にもルールがある。寝具の種類、床面積、壁、便器の数も規制の対象だ。
衛生上の理由などから設けられた規制だが、時代に合わなくなった項目もあろう。訪日外国人の増加もあって客の要望は多様化している。過剰な規制は事業者の創意工夫の芽を摘む。民泊の本格解禁を前に、既存の旅館業界も規制の見直しを要望している。
ホテルと旅館の区分け、客室数や帳場の設置義務などは大幅に緩和していいのではないか。客数を限った高級な宿や若者向けの廉価な宿など、多様な施設の登場に道を開くことになるはずだ。
長期的には、旅館やホテル、民泊、地方の農家体験なども含め、宿泊施設に関する総合的な新法の制定も検討すべきだろう。
IT(情報技術)を生かせば帳場は要らず、迅速なチェックインも可能になる。規制を最小限にとどめることで、個性的な宿泊業をめざす地元企業やベンチャー起業家の新規参入を促し、旅行市場の活性化や訪日外国人の増加につながると期待できる。
民泊に関しては現在、新法による解禁の準備が進んでいる。稼働日数の上限規制や宿泊者名簿の整備などと並び、自治体が地域内での民泊を独自の判断で禁止できるようにしてもいいのではないかという声が、一部で出ている。
そうなれば、住む自治体によっては、住民などによる遊休資産の自由な活用や、海外との交流が制約を受けることになる。民間の創意工夫を官が妨げる規制は、できる限り少なくすべきだ。
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