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経済の体温を高めて物価低迷の克服を

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長引く物価低迷には、その原因をよく見極めて対処する必要がある。日銀の金融政策はもちろんのことだが、他の経済政策、民間部門の努力をバランス良く展開していくことが求められる。

日本銀行は1日までの金融政策決定会合で政策の現状維持を決めた。短期金利を年マイナス0.1%、長期金利の基準である10年物国債金利を0%程度とする――。9月に新たな枠組みとして導入した2本立ての政策金利を保つ。

10月時点の「経済・物価情勢の展望」も公表した。2016年度の消費者物価は予測の中央値で前年度比0.1%の下落、17、18年度は各1.5%、1.7%の上昇で、7月時点からいずれも0.2ポイント下げる。2%上昇の目標達成は「18年度ごろ」と従来の「17年度中」から後にずれると見通した。

黒田東彦総裁は13年の就任時に「2年で2%」の物価上昇を掲げたが、達成時期のメドを何度も先送りしてきた。今回は総裁任期の18年4月までの2%達成がむずかしい状況を初めて認めた。大胆な量的・質的金融緩和やマイナス金利の導入でも、しつこいデフレ圧力を克服できないのが現状だ。

日銀には見通しが狂ったことの反省を求めたいが、経済は生き物であり、冷静な行動が求められる。物価低迷の背景には原油安などに加え、家計や企業が足元の物価の伸び悩みに影響され、中期で物価が上がる感覚を持ちにくい構造があると日銀も分析している。

労働市場はほぼ完全雇用の状況で人手不足の様相が濃い。パートなど非正規の時給は上がっているが、正社員の賃金上昇が鈍く、個人所得の増加幅が限られている。

金融の追加緩和には制約が増えてきた。マイナス金利幅の拡大は資金を仲介する金融機関の収益を圧迫し、年金生活者の不安を広げて逆に経済を冷やす恐れもある。国債買い入れも今のように巨額で続けるのが困難になりつつある。

追加緩和の選択肢は市場や経済の急変に備えて残しておくべきだ。大切なのは家計や企業の将来不安を鎮め、潜在成長率を上げて日本経済の「体温」を高める総合的な取り組みである。

安倍政権も規制緩和や働き方改革、自由貿易の推進に加え、社会保障の安定へ改革を加速すべきだ。労使も政府に言われる前に賃上げの着実な達成に向けて努力する必要がある。日銀任せでは経済も物価も真の勢いを得られない。

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