電力の供給力確保を促すには
経済産業省の有識者会議が、電力の供給力を中長期で確保するための方策を議論している。電力自由化を進め、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを増やすなかで、発電所の新設を着実に促す仕組みを整えることが重要だ。
電力自由化の下では、電力会社が発電所への投資に慎重になる恐れがある。電力会社の地域独占が撤廃され、新規参入者との競争で収益が不透明さを増すからだ。
自由化は確実に進めるべきだが、電源が足りず供給が損なわれることがあってはならない。自由化と安定供給の両立は不可欠だ。
再生可能エネルギーは、天候や時間によって発電量が変わる。需要に見合った電力を安定的に確保するには、出力が下がったときに不足分を埋める調整用の電源が別途必要になる。
再生エネルギーの導入が増えれば、それに応じて火力発電所など調整用の電源を用意しなければならない。しかし、再生エネルギーの発電量が足りない時だけ動かす発電所は稼働率が高まりにくい。
発電事業者は、稼働率が低くて費用の回収を見通せない投資には消極的にならざるを得ない。有識者会議はこの点を踏まえ、将来の電源不足を回避する策として「容量メカニズム」と呼ぶ手法を検討している。
電力小売会社が、電力販売に必要な発電能力を長期の枠として入札を通して買う。発電会社は発電所の稼働状況にかかわらず安定収入が見込める。自由化で先行する米欧で導入が始まっているこの仕組みを日本でも定着させたい。
それには制度設計が重要だ。発電能力に応じて収入を保証した結果、古くて非効率な火力発電所が温存されることになってはまずい。入札価格の決め方を工夫するなど、効率の高い発電所への切り替えを促す制度にすべきだ。
発電能力を増やすだけでなく、供給力が足りない時に消費者に電力利用を控えるよう促し、需要のピークを下げる仕組みなどと組み合わせていくことも大切だ。
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