能登の巨大灯籠「キリコ」後世に 担ぎ手らが電子書籍化
石川県の能登半島各地の祭りで担がれる巨大な灯籠「キリコ」は、過疎化の影響で近年、徐々に数を減らしている。「故郷に伝わる伝統を後世に残したい」。半島の先端にある珠洲市のフリーカメラマンらが組み立て方や見どころを記録した電子書籍「キリコ図鑑」の制作を始めた。
キリコは毎年7~9月、100カ所以上の集落の祭りで登場する。木造で長方形に組まれており、四方に和紙が張られ、文字や絵も描かれる。高さ15メートルを超えるものもあり、能登の夏を力強く彩る。装飾品などが集落ごとに異なるのも特徴だ。
輪島キリコ会館(輪島市)によると、半島全体で約800基のキリコがあるとされるが、過疎化によって担ぎ手が減少。近年は倉庫に眠ったままのものもあり、祭り自体が中止に追い込まれる集落もあるほどだ。
「今のうちに記録を残しておかなければ」。危機感を持ったのが、自らも幼いときからキリコを担いできた団体職員の水上猛之さん(46)。知人のカメラマン、松田咲香さん(30)に声を掛け、昨年9月から2人で図鑑の制作に取りかかった。
これまでにも祭り全体を紹介する本は多数あったが、図鑑の主役はあくまでキリコ。サイズや歴史、組み立て方の説明のほか、作った人のインタビューも掲載する。
最終的には現役として使われている約400基を紹介し全千ページほどの本となる見込みだが、全て完成するまでに7~8年ぐらいかかるという。
このため記録できた集落のキリコから電子書籍として順次、有料配信する。第1弾は珠洲市宝立町で毎年8月にある七夕祭りのキリコ。来夏ごろに出来上がる予定だ。「多くの人の思いが詰まっている。地域の自慢になる図鑑にしたい」と意気込んでいる。〔共同〕