東電とIoT提携 GEパワーの勝算は?
あらゆるモノがネットにつながる「IoT」を使った革新を提唱する米ゼネラル・エレクトリック(GE)が東京電力グループと提携し、日本で火力発電設備の運営効率を高めるサービスを始めた。タービンなどを製造する子会社で今回のサービスを担うGEパワーのスティーブ・ボルツ最高経営責任者(CEO)に日本市場戦略やデジタル革新の考え方を聞いた。
――東電の富津火力発電所(千葉県富津市)に導入するシステムはどのようなものですか。
「発電設備を結びつけてデータを収集し解析することで、顧客の生産性のレベルを今までにない形で向上させる可能性がある。例えば保守ではこれまで予定に従って実施していたが、新システムでは保守のタイミングを予知し最適化することができる」
「GEのIoTのプラットフォーム『プレディクス』はGEの機器でなくても導入できる。オープンアーキテクチャーの概念を採用し、プレディクスの上ではGEが開発したアプリケーションソフトだけでなく、顧客が開発したソフトも稼働できるという特徴もある」
――GEはデジタル化による製造革新やサービスとの融合を打ち出しています。日本市場との相性をどう考えますか。
「日本の市場は最大のビジネス機会があると考えている。低成長期に入った日本は生産性の向上が課題になっているからだ。イノベーションでも世界のリーダー格ということも重要だ」
――そのなかでの東電との提携はどのような意味がありますか。
「東京電力は世界でもファーストクラスの技術力を持つ電力会社だ。これまでGEのIoTプラットフォーム『プレディクス』をベースにしたシステムは日本ではLIXILなどに導入された事例はあるが、エネルギー、電力といったまさにGEの核となるビジネスで東電と協業できることは大きな意味がある」
「富津に導入することは既存の設備でも生産性を改善できることを示すいい例になる。世界に向けたモデルケースになるだろう。富津で成果が出れば、東電の他の火力発電所に広がっていくことを期待している」
――海外ですでに導入した電力会社では成果が出ていますか。
「GEがこれまで納めて稼働している全世界のガスタービンに導入し、1%発電効率が向上すれば、年間50億ドル(約5千億円)のコスト削減につながると試算している。例えば、米国や中東では2%の発電効率の向上や計画外の停止時間の30%削減といった成果が出ている」
――製造業や発電所などを対象としたデジタル関連事業は今後も伸びそうですか。
「急速に成長している。GEパワーだけでもソフトの売上高が30億ドル(約3千億円)まで伸び、収益に貢献している。これからさらに伸びる」
(企業報道部 篤田聡志)
[日経産業新聞10月7日付]
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