稲田防衛相、靖国参拝見送り 中韓に配慮か
防衛省は12日、稲田朋美防衛相が13~16日にジブチに出張する日程を発表した。15日にソマリア沖アデン湾での海賊対策に当たる自衛隊の活動拠点を視察する。稲田氏は15日の終戦記念日に合わせて靖国神社を参拝するかが注目されていたが、事実上回避した。中国や韓国との関係に配慮を促す与党幹部らの働きかけも影響したとみられる。
稲田氏は例年、8月15日に靖国神社を訪れていた。2012年の第2次安倍政権発足後、行政改革相や自民党政調会長に就いても参拝を欠かさなかった。防衛相に就任した3日の記者会見では、15日に靖国神社を参拝するかについて「心の問題だ」と明言しなかった。
中国政府は稲田氏の防衛相就任を受け、外交ルートを通じて閣僚が靖国神社を参拝しないよう要請していた。沖縄県・尖閣諸島周辺で相次ぐ中国船による挑発行動も稲田氏の靖国参拝へのけん制との見方もあった。
このため、与党内からは稲田氏に靖国参拝を見送るよう暗に促す発言が相次いだ。中国に太いパイプを持つ自民党の二階俊博幹事長は3日のテレビ番組で「相手が嫌と言っているものをなんでもかんでも参拝しなければいけないものでもない」とけん制。公明党の山口那津男代表も記者団に「さまざまな影響を総合的に判断されると思う」とクギを刺していた。
「防衛相の立場はほかの閣僚とは違う。大人の対応をしたということだろう」。政府関係者は12日、稲田氏が防衛相としての職務を優先する形で15日の参拝を見送ったことを評価。政府・与党内では抑制的な対応に安堵の声も広がった。
現職閣僚では、今村雅弘復興相が11日に靖国神社を参拝した。高市早苗総務相は昨年、終戦記念日に参拝しており、今年も同様の対応が予想される。