車載CMOSセンサー市場拡大、裏面照射型で競争激化
「2019~2020年には、クルマ1台あたり19個のカメラが搭載されるようになる」。こう予測するのは、ON Semiconductorで車載向けイメージセンサー事業を担当するNarayan Purohit氏(イメージセンサーグループオートモーティブ担当プロダクトライン・マネージャー)である。車載カメラの数は、2000~2005年は2個/台、2013~2015年は9個/台ほど(図1)。ADAS(先進運転支援システム)や自動運転などの機能が普及するのに合わせて、車載カメラの搭載数が急増するという。
市場規模を見ると、車載CMOSイメージセンサー市場は2015年は約5億ドル(1ドル=120円換算で約600億円)で、これが2018年には10億ドル(1200億円)に倍増すると見込まれる。
大きな成長が予測される車載CMOSイメージセンサー市場において、センサーメーカー間の競争が激化しそうなのが、裏面照射型のCMOSイメージセンサーである。裏面照射型品は現在主流の表面照射型に比べて、同じ光量でも明るい画像を出力できる特徴がある。ダイナミックレンジを高められるため、低照度の暗い状況や逆光時など明暗差の大きい場面などでも画質が悪化しにくい。特に自動運転では高い認識性能を常に維持する必要があり、裏面照射型品への期待が大きい。
車載向けの裏面照射品の製品化で先行するのは、車載CMOSイメージセンサー市場のシェアで2位につける米OmniVision Technologiesだ。同社は既に、2014年6月にサンプル出荷を開始し、同年第4四半期に量産化している。スマートフォン向けのCMOSイメージセンサー市場で強いソニーも、車載向けの品種を新開発し、2014年11月にサンプル出荷を始めた。
車載向けCMOSイメージセンサー市場首位のON Semiconductorも攻勢をかける。この市場で「46%のトップシェアを持つ」(Purohit氏)同社は2015年7月9日、車載向けの裏面照射型品として「AR0136T」を発表した(図2)。同社が裏面照射型品を車載向けに投入するのは今回が初めて。2015年第3四半期にエンジニアリングサンプルを、2016年初期に量産する計画だ。
AR0136Tの特徴は、同社が2013年から量産している表面照射型品の「AR0132AT」とピン互換で、ドロップイン置換が可能な点だ。AR0132ATは既に600万個以上を出荷済みで、「Tier1(1次)部品メーカーのトップ10社すべてにADAS用センサーとして出荷した実績がある」(同氏)。ON Semiconductorは今後、AR0132ATの顧客に対してAR0136Tへの置き換えを提案していく。
ON Semiconductorで自動車事業の戦略を指揮するLance Williams氏(オートモーティブ戦略副社長)は「ADAS市場は急速に拡大する」と読み、今回の新製品を武器に更なる成長を狙う(図3)。競合他社との受注合戦が、さらに熱を帯びそうだ。
(日経テクノロジーオンライン 久米秀尚)
[日経テクノロジーオンライン 2015年7月10日掲載]
関連企業・業界