世界市場で競える石油産業に
原油価格の下落は原油や天然ガスを開発・輸入する石油会社の経営に打撃を与えた。投資を大幅に絞り込み、市況の回復をじっと待つ動きが広がる。
重要なのは、この苦境を市況変動の影響を受けにくい事業構造に変え、グローバル市場で競う総合エネルギー企業へ脱皮する契機とすることだ。
米欧メジャー(国際石油資本)は石油ビジネスの上流にあたる石油開発と、中下流にあたる石油精製や販売を一体で手掛ける。
日本では開発と精製・販売を手掛ける会社は別の場合が多い。しかも開発と精製・販売にそれぞれ多数の企業が存在する。商社や電力会社も資源分野に投資する。
日本の開発最大手である国際石油開発帝石の原油生産量は、米エクソンモービルの8分の1にとどまる。精製・販売では製油所が乱立し、設備過剰が続く。海外市場での競争を意識し、再編に動いた鉄鋼や重電の業界に比べ、出遅れていると言わざるをえない。
政府は主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)にあわせ、資源エネルギー分野を含むインフラ輸出の支援に5年間で2千億ドルのリスクマネーを供給する方針を決めた。
インフラや資源案件の受注をめぐる中国などとの競争は激しさを増している。資源外交や資金支援など政府の役割は重要だ。ただし、企業側が支援を使いこなすだけの力を持つことが条件だ。
企業の事業規模が小さければ、開発できる油田や投資の大きさに限界がある。事業の集約や、油田探査や掘削の技術、人材を共有する体制を考えるべきだろう。
精製・販売を手掛ける石油元売り会社は、石油開発に先行して再編への機運が高まっていた。だが、出光興産の大株主である創業家が昭和シェル石油との合併に反対し、不透明感が強まっている。
世界のエネルギービジネスは石油や電力、ガスなど業種の垣根を越えた再編・融合が進む。日本企業もこの流れに乗り遅れず、迅速に判断を下さねばならない。