猪瀬前知事「5000万円は選挙資金」 罰金50万円納付し謝罪
猪瀬直樹前東京都知事(67)が徳洲会グループから5千万円を受け取っていた問題で、東京簡裁は28日、公職選挙法違反(虚偽記入)の罪で罰金50万円の略式命令を出した。東京地検特捜部が略式起訴していた。猪瀬氏は即日納付した。同氏は同日、都内で記者会見し「5千万円に選挙資金の側面があったことは否定できない。深くおわびします」と謝罪した。
都知事経験者が公選法違反で刑事責任を問われたのは初めて。猪瀬氏は公民権を5年間停止される。
猪瀬氏は28日午前、選挙運動費用収支報告書を訂正した。
特捜部は、猪瀬氏が5千万円について選挙資金だったと認めたほか、実際に選挙に使った形跡がなく、都知事を辞任したことなども考慮し略式起訴にとどめた。具体的な便宜を図った形跡がないことなどから、収賄容疑は嫌疑不十分とした。
起訴状によると、猪瀬氏は都知事選出馬前の2012年11月20日、徳田毅元衆院議員(42)を通じて、徳洲会の徳田虎雄元理事長(76)から現金5千万円を選挙資金として借り入れたのに、選挙運動費用収支報告書に記載しなかったとされる。
猪瀬氏は28日の会見で、選挙目的でなかったと説明した辞任前の都議会答弁について「混乱して記憶違いがあった」と釈明。5千万円の提供の経緯について「選挙で何が起こるか分からず、自己資金が不足した場合などを念頭に置いてお借りした」と説明を翻した。
そのうえで「認めるべきは認めなければならない。けじめをつけるため、処罰を受け入れたい。日々後悔と反省にさいなまれている」とし、「許されるならばもう一度、作家として仕事に励んでいきたい」と話した。
猪瀬氏の説明や関係者の話によると、猪瀬氏は12年11月6日に虎雄氏と面会。同14日に徳田元議員と虎雄氏の妻、仲介役の新右翼団体「一水会」木村三浩代表(57)を交えて会食し、同20日に議員会館で元議員から5千万円を受け取った。猪瀬氏側は徳洲会への特捜部の家宅捜索後の昨年9月に全額を返却した。
公選法は選挙運動のための資金を選挙運動費用収支報告書に記載するよう義務付けている。罰則は3年以下の禁錮または50万円以下の罰金。
特捜部は今年1月、公選法違反容疑などでの告発状を受理。猪瀬氏や虎雄氏から任意で事情を聴くなど捜査を進めていた。